著者
重藤 隼人
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.97-103, 2022 (Released:2022-11-09)
参考文献数
30

徒手理学療法の鎮痛効果について,従来の末梢組織の変化に起因したメカニズムではなく中枢神経系の鎮痛メカニズムが近年報告されており,徒手理学療法の鎮痛メカニズムも中枢神経系のメカニズムも含めた包括的なモデルが提唱されている。本稿では痛みの生理学に基づいて,徒手理学療法の鎮痛メカニズムを徒手刺激由来の鎮痛効果とプラセボ鎮痛効果に分類して概説し,徒手理学療法のエビデンスについても概説した。
著者
越野 裕太 石田 知也 石田 和宏
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-17, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
16

〔目的〕本論文の目的は,足関節・足部骨折症例に対する徒手療法が足関節背屈可動域に与える効果を,システマティックレビューおよびメタアナリシスによって明らかにすることとした。〔方法〕5つのデータベースを用いて2022年7月までの論文を検索およびスクリーニングを行い,足関節・足部骨折症例に対する徒手療法の介入が足関節背屈可動域に与える効果を研究した無作為化比較試験を特定した。背屈可動域への効果を徒手療法群と対照群で比較するためにメタアナリシスを実施した。〔結果〕3つの論文が採用され(計172名),介入内容は関節モビライゼーションが主だった。背屈可動域への効果に関して徒手療法群と対照群に有意差を認めなかった(標準化平均差 0.05; 95%信頼区間 -0.50, 0.60)。〔結論〕足関節・足部骨折症例に対する関節モビライゼーションは背屈可動域の有意な改善効果を認めなかった。今後質の高い研究が必要であると考えられた。
著者
家入 章 対馬 栄輝 加藤 浩 葉 清規 久保 佑介
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.67-74, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
23

〔目的〕変形性股関節症(股OA)に対する徒手療法の効果について再調査することである。〔デザイン〕PRISMA声明を参考に作成したシステマティックレビュー。〔方法〕検索は,2022年3月31日まで実施し,MEDLINE/PubMed,Cochrane Library,Physiotherapy Evidence Database(PEDro)を使用した。対象は,40歳以上の股OA患者とした。〔結果〕4,630編の論文が特定され,適格基準を満たした13編の論文が選択された。本邦からの報告は無かった。12編はPEDroスケールで8点以上と高い研究の質を示した。徒手療法は,一般的治療や徒手療法を含まない治療と比べると股OAの痛み,身体機能,QOLの改善,質調整生存率(QALYs)の増加に有効であるとの報告が多かったが,効果を疑問視する報告も3編みられた。〔結論〕股OAに対する徒手療法の効果は他の治療と比べて明らかに効果があるとはいえない。本邦からの報告は皆無であるため独自の調査も望まれる。
著者
坂 雅之 村木 孝行
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.51-58, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
22

凍結肩に対する理学療法は,生活指導やストレッチングを主体とした運動療法から構成され,これに徒手療法を加えることが推奨されている。本稿では,「凍結肩患者に対する治療として,システマティックレビューおよびメタアナリシスによりその効果が支持されている徒手療法はあるか」という疑問に答えるべく,現在利用可能なエビデンスを整理した。2022年10月までに公表された凍結肩に対する徒手療法に関連するシステマティックレビュー論文17編のうち,5編の論文でメタアナリシスが行われていた。これらのメタアナリシスの結果に基づくと,拘縮期または凍結期の凍結肩患者に対して,運動併用モビライゼーションや関節モビライゼーションが疼痛軽減,肩関節可動域改善に有効である可能性が示された。炎症期の患者に適用できる徒手療法,徒手療法の最適な治療回数・期間,運動療法と併用した際に期待される効果等に関しては不明であり,今後の研究課題と言える。
著者
諸谷 万衣子
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-35, 2022 (Released:2022-10-29)
参考文献数
34

運動系は理学療法士のアイデンティティーを構成する大きな一領域である。運動機能障害を説明するモデルとして,病理運動学的モデルと運動病理学的モデルの2種類を提案されることがある。Movement System Impairment diagnostic system(運動系機能障害診断システム:MSI診断システム)は運動病理学的モデルを基盤としており,Sahrmannによって提唱されたものである。MSIでは,日常活動の反復運動や持続的アライメント(ライフスタイル)が運動機能障害をもたらし,いずれは筋骨格系の問題を引き起こすと考えている。本稿ではMSIの主要コンセプトである,過剰可動性の部位が痛みの局所である場合が多いこと,相対的柔軟性と相対的硬さの影響,診断がもたらす結果,系統的な検査の大切さ,活動に特異的な再練習の必要性などを説明する。また,MSIを学ぶ過程で度々みられる誤解についても紹介する。
著者
有家 尚志 東 裕一 中村 駿佑 池田 翔 平田 靖典
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-10, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
23

Lateral elbow tendinopathy(LET)に対する保存療法の一つに徒手療法があるが,効果について邦文で整理されたエビデンスは不十分である。本研究の目的は,LETを有する人々を対象に,徒手療法の効果を検証したシステマティックレビュー(SR)を網羅的に評価することとした。PubMed,CENTRAL,PEDroを用いて検索した(検索日2022年2月)。方法論の質評価には,A Measurement Tool to Assess Systematic Review 2を用いた。論文の選択,データ抽出,方法論の質評価は,2名の研究者が独立して実施した。最終的に3件のSRが該当し,質的に分析した。介入として検討された徒手療法は,mobilization,neural tension,deep friction massage(DFM),Mill’s manipulationが含まれた。3件ともに,研究計画の事前登録が不十分であった。エビデンスの確実性は,DFMが疼痛と機能のアウトカムに与える効果のみ検証されていたが,very lowであった。本研究の結果,LETに対する徒手療法の効果について検証するには十分なエビデンスがなかった。今後は,アウトカムを統一して検討することが重要である。