著者
谷口 彩乃 権 哲 山代 亜紀子 細川 豊史
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.548-552, 2016 (Released:2016-09-23)
参考文献数
17

がんの早期診断や治療法の発達により,がんと診断された後の長期生存者は増加しており,彼らの慢性疼痛が問題となっている.とくに慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の長期使用は,乱用・依存などが問題となるため注意を要する.今回,痛みの原因となった腫瘍消失後も遷延する痛みをもつ患者に,鎮痛以外の目的でオピオイド鎮痛薬を使用する薬物関連異常行動を認めた悪性リンパ腫の1例を経験した.鎮痛目的ではなく,精神的な苦痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用することはケミカルコーピングと定義され,乱用や依存の前段階と考えられている.オピオイド鎮痛薬の内服が長期にわたると見込まれる患者には,オピオイド治療を安全に管理するために,慢性疼痛治療に準じた薬物療法の知識と適切な患者評価が重要である.
著者
大西 佳子 細川 豊史 坪倉 卓司 深澤 圭太 上野 博司 権 哲 原田 秋穂 深澤 まどか 山代 亜紀子 谷口 彩乃 波多野 貴彦 田中 萌生 仲宗根 ありさ 岡田 恵
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.509-513, 2015 (Released:2015-04-16)
参考文献数
10
被引用文献数
1

転移性脳腫瘍による頭痛は,腫瘍による脳血管の偏位や頭蓋内圧亢進に基づく硬膜の緊張,痛覚神経が存在する頭蓋内部位の牽引などで生じる.また,腫瘍の髄腔内播種やがん性髄膜炎による髄膜刺激症状などによっても生じる.頭蓋内圧亢進による頭痛の治療は,通常,高浸透圧輸液とステロイドの投与により脳浮腫の軽減と頭蓋内圧を下げることで行うが,内圧が下がらず頭痛治療に難渋することも少なくない.今回,頭蓋内圧亢進に基づく頭痛に対し,高浸透圧輸液とステロイド投与が奏功せず,オピオイドの増量が奏功した2 症例を経験した.痛覚神経への浸潤に対してはオピオイドが有効であるが,頭蓋内圧亢進による頭痛に対してオピオイドが有効であるという報告は過去にない.高浸透圧輸液やステロイドで頭蓋内圧が下がらず頭痛のコントロールが不十分な際は,NSAIDs やオピオイドの投与あるいは増量で対処を試みることは臨床的に十分価値があると考える.