著者
谷口 泰弘 塚田 敬義
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.151-158, 2005-09-19 (Released:2017-04-27)
参考文献数
23

医療における情報の非対称性が1960年代から指摘され、インフォームド・コンセントの法理を成熟させる諸活動、リスクマネジメント等の医療者側の取組みによって問題を克服する試みがなされてきた。しかし、患者側の視点も交えた全体的な機会集合での取組みの必要性を指摘し、組み入れることによって緩衝に向けた更なる発展が期待できる。本研究は、情報の非対称性が存在した上で取引が成立する社会経済活動の中から対処方法等を検討し、特殊領域とされる医療の場において、この問題がどのように関係するのかを検討した。研究材料として、逆選択、モラルハザード、エージェンシー関係を問題群として抽出し整理を試みた。考察は、医学・医療の権威主義的側面と自由主義的側面を対比させ、両者に欠落する問題点を指摘した。知識偏重型の情報の非対称性、稀少資源社会に生きていることの忘却を廃し、社会構成員が主体的に参加することと、その制度設計を行うことの重要性を記述した。