著者
吉水 隆広 公文 久見 巽 香織 吉田 佳奈 石田 崇 谷口 由利子 井原 史江 阿部 誠
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0264-C0264, 2004

【目的】当院では整形外科クリティカルパスについて、パスの整合性と明確なアウトカム他職種間での共通理解を目的としたパス検討会を平成14年5月より開催し、順次パスの改訂に取り組んでいる。TKAパスについては、平成14年9月より改訂運用しているが、改訂時に術後の転院を円滑に行なう目的で術前バリアンス評価(以下術前V評価)が導入された。今回は、術前V評価導入後1年間の結果について検討を行なったので報告する。<BR>【方法】平成14年9月から平成15年8月までの期間にTKA目的で入院した73名中、術前V評価が実施でき術後に合併症を生じなかった44名、男性13名、女性31名、平均年齢73.2±6.2歳、内訳はRA3名、OA39名、その他2名について、術前バリアンスの有無及び各術前バリアンス項目(痴呆・FIM・転倒歴・呼吸循環・歩行耐久性・肘及び手関節可動域制限・活動性・他関節疼痛)ごとの術後在院日数・転院率について比較検討した。術前V評価は、バリアンス項目8項目より術前に術後22日目を退院とするパスに適応があるかどうかの予測を行なう試みであるが、バリアンスの判定は定めた基準に適応しない項目が8項目中1項目でもあればバリアンスありとした。<BR>【結果】術前バリアンスなし群(以下V無群)22名、男性6名女性16名、平均年齢73.6±7.4歳、内訳RA1名、OA21名は術後在院日数24.4±5.0日、転院率9%。術前バリアンスあり群(以下V有群)22名、男性7名女性15名、平均年齢72.8±4.9歳、内訳RA2名、OA18名、その他2名は術後在院日数28.6±9.0日、転院率23%であった。各術前バリアンス項目ごとの結果ついては、痴呆群は0名。FIM群9名は術後在院日数27.0±7.1日、転院率22%。転倒歴群7名は術後在院日数28.6±9.5日、転院率14%。呼吸循環群3名は術後在院日数29.0±15.7日、転院率33%。歩行耐久性群8名は術後在院日数46.0±11.0日、転院率25%。可動域制限群4名は術後在院日数28.8±12.4日、転院率0%。活動性群1名は術後在院日数21日、転院率0%。疼痛群8名は術後在院日数47.3±11.5日、転院率38%であった。<BR>【考察】今回の結果から術前バリアンスの有無による術後在院日数、転院率に差を生じたことは術前V評価の必要性を示唆していたが、V無群に転院率が9%も生じ、逆にV有群の転院率が23%程度であったことから術前V評価の内容を変更する必要性があると考えている。術後在院日数より術前のFIM、転倒歴、関節可動域に関してはバリアンスへの影響は少なく、歩行耐久性、疼痛についてはバリアンスとなる可能性が高い結果より、今後はこの2項目に関するデータの蓄積とより詳細な内容の検討で術前V評価の精度を高めていけるのではないかと考えている。