- 著者
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谷口 省吾
冨永 晋二
- 出版者
- 福岡歯科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2002
還元作用の強い輸液剤を投与することで、血液の酸化還元レベルを還元状態にして手術侵襲やショックなどの生体侵襲時に起こる活性酸素による酸素ストレスを防御して、生体の恒常性を保つことが可能かを検討した。1)種々の輸液剤(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、フィジオ140、生理食塩水、フィジオ70、EL#3)の酸化還元電位を測定したが、輸液剤の種類により異なる値を示した。還元剤としてはアスコルビン酸およびアルカリイオン水を添加し、アルカリイオン水の生成はイオン専科LB-161、酸化還元電位の測定はpH/ION Meter F-23にて行った。アルカリイオン水やアスコルビン酸添加により輸液剤の酸化還元電位を低下させることができた。2)血液の酸化還元電位を測定し、ある一定の範囲内にあることが示された。また、アルカリイオン水やアスコルビン酸添加により血液の酸化還元電位を低下させることができた。3)手術侵襲や重症ショックなどの生体侵襲時の血液の酸化還元電位を測定し、手術侵襲時には大きな変動は認められなかったが、重症ショック時には酸化還元電位の有意な上昇が認められた。4)酸化還元電位の異なる輸液剤(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、フィジオ140)を手術侵襲や重症ショック時に投与し、還元作用の強い輸液剤の投与により血液の酸化還元電位を減少させることができた。この時、代謝性アシドーシスや高乳酸血症も改善傾向が認められた。結論として、輸液剤の酸化還元電位を調節可能であり、この輸液剤を投与して血液の酸化還元電位を調節することが可能であることがわかり、生体侵襲時の酸化還元電位の上昇を防ぎ酸化ストレスを減少させることができる可能性か示唆された。