著者
谷口 雅子
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.75-86,152, 2003-03-21 (Released:2011-05-30)
参考文献数
39

本研究は、スポーツが移入された明治・大正期に注目し、規範の生成という観点からみた、スポーツの場におけるジェンダーの生産・再生産の過程を明らかにすることを目的とする。その際に、これまでのセックス/ジェンダーという二元論的思考ではなく、男あるいは女というカテゴリーの生成自体を歴史的・政治的出来事として捉え、むしろそれが起きた状況やその効果を分析の対象とする。そして、そもそも男と女という区別は、妥当/非妥当という形で他者から教育されたものと考える。妥当/非妥当の形式による区別の操作という意味での規範の生成過程については、身体どうしのコミュニケーションから超越性が生じ社会的な意味や規範が定まっていくというプロセスに関する大澤理論に依拠している。分析の結果、スポーツの逸脱性を抑制する上で男女を差異化する必要性が増した時、それぞれの行為を限定する言説が形成され、ジェンダーが生産されていった過程が明らかになった。また、スポーツを教育的に行うことは、他者との直接的コミュニケーションから生じる志向性の連鎖から、行為の妥当性を一致させることが容易になり、ジェンダーが再生産されていく非常に有効な場となり得ることが明らかになった。