著者
小峯 裕己 谷合 哲行 木村 洋
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

化学物質による室内空気汚染に関する対策を講じる際に、竣工直後における室内の化学物質濃度、放散量の経時変化、濃度の減衰時間などの予測が不可欠である。本研究では、小形チャンバー法を用いて、環境因子の変化する実環境を考慮した建材からの化学物質放散量推定式を明らかにし、化学物質放散量測定値に基づく室内濃度予測手法を提案することを目的とする。本研究成果は以下の通りである。1)HCHOを放散する木質建材が単体で存在する条件下において、建材設置量、温湿度、換気量が異なる実環境を想定した模型実験を行い、小形チャンバー法を用いたHCHO放散速度推定式に基づく、HCHO気中濃度予測式の妥当性を検証した。2)種類、HCHO発散等級の異なる木質建材が混在する条件下に置いて、温湿度、N/L値(換気回数/試料負荷率)を系統的に変化させ、単体のHCHO放散速度推定値に基づいた室内HCHO濃度予測式の妥当性を検証した。3)種類、HCHO発散等級の異なる木質建材が混在し、温湿度変動が存在する条件下において、HCHO気中濃度予測式の妥当性を、実環境における長期間暴露試験により検証した。4)塗料から放散されるトルエン放散速度測定値に基づいて、環境因子がトルエン濃度の経時変化に与える影響について明らかにした。内部拡散支配型放散過程においては、温度の影響が少ないが、蒸散支配型放散過程においては温度の影響が大きいことが明らかにされた。また、トルエン濃度の減衰機関は二成分指数間モデルを用いて予測できることを示した。5)HCHOを放散する建材とトルエンを放散する塗料が混在する条件下において、HCHO、及びトルエンの放散速度に与える相互影響を明らかにし、それぞれの化学物質の期中濃度予測に与える影響を明らかにした。塗料からのトルエンの放散挙動は塗膜への吸着・再放散があるために、設置後5日程度は影響があることを明らかにした。竣工直後で塗膜が乾き切っていない状況でHCHO濃度の測定を実施すると、危険側の評価をしてしまう可能性がある。