著者
龍野 玄樹 鈴木 昌八 落合 秀人 犬塚 和徳 神藤 修 宇野 彰晋 松本 圭五 齋田 康彦 谷岡 書彦 北村 宏
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.699-705, 2011
被引用文献数
1 1

症例は62歳女性で,検診での超音波検査で肝腫瘍を指摘され,当院を受診した.B型・C型肝炎ウィルスマーカーは陰性であり,血清CA19-9値が281.6U/mlに上昇していた.腹部CTで肝左葉の肝内胆管拡張と肝外側区域に境界不明瞭で辺縁が軽度造影される5cm大の腫瘍を認めた.門脈左枝内は腫瘍栓で充満していた.門脈腫瘍栓合併肝内胆管癌あるいは混合型肝癌を考え,5-FUによる肝動注化学療法を先行させた.治療開始後にCA19-9値の低下,肝腫瘍の縮小と門脈腫瘍栓の退縮を認めた.化学療法終了から1か月,後肝拡大左葉切除,肝外胆管切除・胆道再建,リンパ節郭清,門脈再建を施行した.病理組織学的には乳頭状の増殖を示す高分化型腺癌から成る腫瘍であり,門脈腫瘍栓を伴った肝内胆管癌と診断された.術後22か月の現在,再発なく社会復帰している.門脈腫瘍栓合併肝内胆管癌に関する文献的考察を加え報告する.