著者
小田 良助 綿貫 宏光 藤井 勝仁 谷川 靖信
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.247-254, 1981-11-30

沖縄本島南部地区は, 近年著しく酪農が発達した。筆者らは昭和54年度の経営を対照に5市町村から36戸の中堅農家を選定し, その経営調査を行った。その要約は次の通りである。(1)成牛飼養頭数20∿40頭の農家が多く, 家族経営が殆んどで堅実な酪農経営であった。たゞ, 育成牛飼養頭数が成牛2∿3に対し1の比程度に飼われ, やゝ多い傾向が窺えた。(2)1頭当り年間産乳量は, 3000∿4500kgが大半を占めており, 5000kg以上は僅か5%にすぎなかった。これは沖縄の牛が資質が悪いことではなく, 夏期高温による夏バテによって泌乳能力が低下しているものと考えられる。従って暑熱対策を考え, 産乳量の増加を図ることである。(3)一般に乳飼率は高く40∿55%を示したものが, 調査36農家中15農家(42%)を数えた。このことは夏期高温により, 必然的に熱発散によるエネルギー消費補充が要求されることによって, 濃厚飼料の消費が多くなるものと考える。(4)労働時間は, 1日平均12時間を数えた。従って1人1時間当り労働報酬は1000円以下が約50%を数え, 低賃金であった。(5)粗飼料は, 沖縄県独特のネピアグラスが栽培され, 1頭平均5アールの小面積乍ら本草の多収穫栽培によって夏期は充分に粗飼料確保が可能である。しかし冬期粗飼料が不足するので, サイレージの利用を考えるべきである。