著者
谷村 一郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.643-656, 1977-12-25

家畜の眼球について形態学的研究を行った. 採取眼球のうち馬16個, 牛28個, 山羊26個, 豚30個, 犬18個, 猫20個および兎28個の眼球については各部位を計測し,ー方, 残りの馬8個, 牛22個, 山羊14個, 豚18個, 犬20個, 猫26個および兎16個の眼球の各部について走査型電子顕微鏡による観察を行った. 各部位の計測値は動物の種類により特異的なものであった(Table 1). 走査型電子顕微鏡観察の結果では, それぞれの動物の種類において各部位に特徴的な所見が得られた. 虹彩顆粒は馬, 牛, 山羊のほかに, 豚や犬でも小顆粒が瞳孔縁全周に配列することが認められた. 毛様体突起は動物種によりその形態を異にし, 馬や牛では太く, 起始部は分岐しないが, 山羊や豚では高いものと低いものがあり, 犬や猫では低い突起が集まって櫛状を呈する. 毛様小体は種々な太さの線維束から構成され, その伸長径路も動物種間で差が見られ, 硝子体包に終止する部位は特異なV字型(牛, 山羊, 犬, 兎), 楔形(馬, 豚), 馬蹄型(猫)を呈した. 水晶体には動物間による構造上の差はみられなかったが, 水晶体線維面に多数の小孔の存在が確認された. 視神経円板は各家畜により形態を異にするが, 牛および山羊ではこの部位に硝子体突起の存在が認められ, その立体構造が明らかにされた.