著者
谷田 則幸 大東 正虎
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-18, 2007-06

2004年に発生した中越地震において、被災状況の確認と被災者の発見は、非常に困難であった。電話網(有線、携帯)が不通状態になったことと、それに伴う政府の対応策も後手に廻ったことが主な原因と考えられる。こうした問題を解決するために総務省では、大規模地震が発生したときに上空から小型のセンサを多数散布することで情報収集を行うことが計画されている。しかし、どのような機器が採用されるかは現時点では公表されていない。我々は、電波の送受信が可能なアクティブ型ICタグを活用すれば、こうした計画が実現できると考える。本稿では、震災被災者を発見するためにアクティブ型ICタグをヘリコプターによって上空から散布した場合の位置特定手法の提案と考察を行う。電波の送受信が可能なアクティブ型ICタグは、通信手段が何も無い場所において、簡易なネットワークを自律的に形成することができる。また、温度などが感知できるセンサを付けることで、被災者の存在を確認することができる。また、測量方法のひとつである三辺測量を位置特定アルゴリズムとして採用し、被災者の位置特定を行う。三辺測量において搭要な距離情報は、ICタグが発信する電波の到達時間を距離に換算することで、測量が可能となる。被災者のいる位置は、ランダムに散布されたICタグを使って、位置が特定されたICタグ3個を利用して任意の1点を特定し、三辺測量を繰返しながら特定される。上述のようなICタグの散布、被災者の位置特定等に関してマルチエージェント・シミュレーションを実施し、その結果を考察する。