- 著者
-
谷野 絵美
余田 敬子
- 出版者
- 日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌 (ISSN:21880077)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.2, pp.151-155, 2020-04-20 (Released:2020-05-20)
- 参考文献数
- 6
近年,口腔咽頭の性感染症の増加が懸念されている.自ら性感染症を心配して耳鼻咽喉科を受診する患者が少なくない.梅毒の口腔咽頭病変は特徴的な所見がみられるが,前医で抗菌薬を投与され他覚的所見が消失した状態で受診することもある.淋菌・クラミジア咽頭感染は特徴的所見に欠き鑑別が難しいことが多い.当科で最近の1年間に咽頭梅毒2例,淋菌およびクラミジアの咽頭感染を1例経験した.いずれの症例も当科初診時は明らかな特徴的所見は認めなかったが,咽頭痛や咽頭違和感が遷延して自ら咽頭の性感染症検査を希望して受診し,それぞれ梅毒抗体検査,核酸増幅法検査を行った結果診断された. 患者が咽頭の性感染症を心配して耳鼻咽喉科を受診した場合,咽頭の他覚的所見がなくとも性感染症検査を行うことが望ましい.また治療後に性感染症の感染リスクが高い性行動を持つ人に対しては,定期的な性感染症の検査の継続が望ましいと考える.