著者
豊島 学 蒋 緒光 小川 覚之 廣川 信隆 吉川 武男
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10.11, pp.531-537, 2020-10-05 (Released:2020-10-17)
参考文献数
46

統合失調症は約100人に1人が発症する比較的頻度の高い精神疾患である.幻覚・妄想などの特徴的な症状に加えて,意欲が低下し感情が鈍麻する,認知機能が障害されるなどの症状があり,社会生活に支障が出ることが多い.統合失調症の病因・病態には,複数の遺伝的要因と環境要因の関与が考えられているが,分子メカニズムにはいまだ不明な部分が多い.近年,統合失調症の病因・病態に酸化ストレス(カルボニルストレス)や小胞体ストレスの関与が示唆さており,それらストレスによるタンパク質の「質」の低下(凝集化などによる機能低下)が注目されようになった.本稿では,統合失調症の基礎知識から研究方法について紹介したのち,細胞内ストレスに注目して,統合失調症で見られるタンパク質の「質」の変化について概説する.
著者
豊島 学 吉川 武男
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.119-123, 2018 (Released:2019-11-01)
参考文献数
10

近年のiPS細胞技術の進歩により,iPS細胞から神経幹細胞や神経細胞が作製可能となり,患者由来のサンプルを用いて統合失調症のさまざまな病因・病態仮説を検証できるようになった。我々は統合失調症の発症脆弱性基盤として支持されている神経発達障害仮説に注目し,22q11.2の微細欠失を持つ統合失調症患者由来iPS細胞を用いて,神経分化・発達の異常にかかわるマイクロRNA(miRNA)の分子病態について解析した。患者由来の神経幹細胞では,神経細胞への分化効率の異常など神経発達障害を示唆する表現型がみられ,これらの異常は特定のmiRNAやp38の発現変化がかかわっていることが明らかになった。更に,統合失調症患者死後脳においても,神経細胞とアストロサイトのマーカー量比に異常があることが判明し,脳発達期における神経幹細胞の分化効率の微細な変化が,統合失調症の病因の可能性の一つであることが示唆された。
著者
豊島 学
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、統合失調症の発症メカニズムやその病態に対してNG2(+)細胞がどのように関与しているかを明らかにするため、統合失調症薬理モデルマウス、精神疾患治療薬投与マウスを作製し、NG2(+)細胞数の変化やNG2(+)細胞特異的な遺伝子発現変化を解析した。その結果、Lithium を投与したNG2DsRed マウスにおいて、NG2(+)細胞数の減少とRbpj 遺伝子の発現増加が認められた。Rbpj は、Notch シグナルの主要な伝達因子であることから、Lithium はNotch シグナルを介してNG2(+)細胞の分化や増殖を制御する可能性が示唆された。