- 著者
-
豊島 襄
- 出版者
- 日本商業学会
- 雑誌
- 流通研究 (ISSN:13459015)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.79-100, 2002
経営やマーケティングの研究者の問でも、研究の「方法論」の問題は避けて通られがちであるという。しかし、経営やマーケティング研究に実務へのインプリケーションを求め続けてきた筆者30年の実務経験の中で絶えず感じてきた不満の根本原因を辿ると、それらが拠って立つ方法論の問題に行き着く。具体的にはその不満は、「実証主義」が無批判的にメインパラダイムになっているというところにあり、それが依拠する「存在論と認識論」にあるように思われる。<BR>この筆者の問題意識に応える研究が、幸い、近年アカデミズムの世界でもなされ始めた。日本では、石井淳蔵『マーケティングの神話』 (1993) や、沼上幹『行為の経営学』 (2000) であり、アメリカではK.J.ガーゲン『もう一つの社会心理学』 (1998) などである。それらは、それぞれマーケティング、経営学 (組織論) 、社会心理学と直接の研究領域は異なるが、大きく自然科学とは違う「社会科学」の方法論として捉えれば、同じ土俵で議論できる。<BR>それら先行研究のレビューを通じて、ひとまず、一般的な社会科学の「存在論と認識論」を問い、続けてマーケティング研究という社会科学の一分野において、「実証主義的アプローチ」の位置づけの見直しと「解釈主義 (学) 的アプローチ」の必要性についての議論を行なう。<BR>マーケティング研究のみならず実務においても、過去の理解や未来に向かう意思決定において「解釈」と「読み」が欠かせないことを主張する。