著者
豊嶋 省二
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-2, 2012-03-30 (Released:2018-07-26)

動物園獣医師の仕事といって真っ先にあげられるのは,動物園で飼育展示する動物がケガや病気になった際の治療行為=臨床業務である。飼育されてはいるが,動物園動物は外敵から身を守る本能を身につけた野生動物である。外的から襲われるおそれのない動物園動物だが,異常を隠す傾向が強く,病気であることを早期に発見することは難しい。それゆえに動物園動物の健康を守るためには,動物が病気になることを予防すること,動物が異常な状態になったこと(病気,ケガ)を早期に発見して治療することが大切となる。動物を病気から予防するためにワクチネーションや抗菌剤の予防的接種,飼育場所の衛生管理,動物の栄養管理なども行っている。動物園では,動物の移動に伴う外部からの病原体の侵入を防止するための取組みとして,外部から導入する全ての動物で自主的に検疫を行い,健康であると確認された動物が,飼育展示施設に移動し展示に供される。園内で死亡した飼育展示動物は全て病理解剖を実施し,死因を究明している。