著者
阿部田 聡 豊泉 茂 金田 史香 神山 政恵 小池 秀海 吉野 佳一
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.89-95, 1999

症例は47歳男性。1996年5月16日,ボリビア(標高4,200m)へ出張した翌日より頭痛,悪心,呼吸困難,意識障害を呈し,急性高山病と診断され,現地の病院で治療を受けたが,意欲低下,意識不鮮明,運動緩慢が残存した。6月3日帰国し,翌日当科に入院した。知能障害と錐体外路症候を認め,発症20日目のMRIで両側淡蒼球に病変がみられた。SPECTでは両側前頭葉,側頭葉,基底核の血流低下を認めた。発症29日目より高圧酸素療法を行い,自覚症状,神経心理学的検査成績およびSPECTの改善がみられた。急性高山病で淡蒼球病変を呈した報告は本例を含め4例と稀である。ごく早期を逸しても高圧酸素療法は試みるべき治療法と思われる。