著者
貝沼 明華
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.49, 2016 (Released:2021-06-04)

マンガやアニメ・ゲームのキャラクターに扮する「コスプレ」を楽しむ「コスプレイヤー」と呼ばれる人たちがいる。「コスプレイヤー」の目的は、好きな作品やキャラクターへの愛情を自らの身体を用いて表現することであり、それは創作意欲を満たすこととなっている。そのため、「コスプレイヤー」にとって場所は撮影するところではなく、創作活動の場という意味を持つ。創作活動の場は、物語世界に近いほどコミュニティ内での評価が上がり、再現度の高い「コスプレ」写真が共感されることで、「コスプレイヤー」は作品に対する認証欲求が満されることとなる。 「コスプレイヤー」の日常性をそぎ落とし、物語性の高い場所を選択する動きは、現代社会で希薄になった「ハレ」の感覚を取り戻す作用を示している。「コスプレ」は演じ手の自意識、外見ともに非日常的なため、観覧者をも巻き込んで「ハレ」の世界を演出する。また、愛知県一宮市と彦根城の事例から、地域の特色と「コスプレ」が結びつくことで、若者と地域住民、観光客の交流の手段としての効果が期待できるといえる。