著者
賀來 敦 松下 明
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.60-66, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

目的 : 大学医学部地域枠入学試験と連動した自治体奨学金募集要項・条例等の横断調査を行い, 奨学金受給による医師のキャリアへの影響を明らかにする.方法 : 2013年度に地域枠関連自治体奨学金制度を実施した42自治体について貸与総額・義務年限・勤務科の指定等の調査を2013年11月から2014年1月の期間にWeb上で行った.結果 : 53大学と関連する59奨学金制度を認めた. 貸与総額最頻値1440万円だった. 借款契約の特徴として, 高返済利率 (10%以上) を7割の制度で, 一括返済の記載を41制度に認めた. 義務年限内に3年以上後期研修先の自由選択可能なものが3制度, 自由選択期間がないものが48制度だった.結論 : 奨学金制度の8割では義務年限中に, 専門医制度研修プログラム整備指針で求められる最低3年の基本診療領域後期研修の確保が十分保障されない. 今後予想される奨学金辞退現象の低減には適正な返済利率・返済方法の設定および専門医取得の支援を要する.
著者
賀來 敦 松下 明
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.31-37, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

目的 : 全国医学部医学科入試募集要項の横断調査を行い, 地域枠制度の全容把握と問題点の考察を行う.方法 : 2013年度に77大学医学部が実施した地元出身者のための地域枠・将来地域医療に従事する意志を有する者を対象とした入学枠について, 大学区分・選抜方法等をWeb上で調査した.結果 : 62大学・地域枠数148枠・総募集人数1305名を認めた. 国立大学で86枠, 推薦/AO入試で90枠を占めた. 卒業後進路限定条件を30枠, 奨学金受給義務を84枠, 確約書で任意団体への所属を求めているものを8枠で認めた. 出身要件は83枠で, 地域医療教育の特殊カリキュラムは13枠のみに認めた.結論 : 一部の入学枠で, 卒後進路制限・奨学金受給義務化・不適切な確約書の取得などの制度構成の問題点を認めた. また本邦の出身用件はWHOガイドラインで推奨するへき地出身者の定義と異なり, 特殊カリキュラムによる教育支援実施率は低かった.