- 著者
-
賀来 美寛
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.2, pp.182-201, 1970 (Released:2007-06-29)
- 参考文献数
- 101
- 被引用文献数
-
2
鼻副鼻腔疾患に栄養が大きく影響していることはすでに知られているが, ビタミンE (以下Eと略す) は近年多くの研究がなされているにもかかわらず, 耳鼻咽喉科領域での基礎的系統的研究は皆無といつてよく, そこでまず萎縮性鼻炎, 血管神経性鼻炎, 慢性副鼻腔炎, 肥厚性鼻炎の患者につき正常者を対照として血清中E量を測定し, 又全例にE負荷後血中値を測定した.最も低値を示したのは萎縮性鼻炎であり, Eとその病態成立が最も密接な関係にあると思われたが, 血管神経性鼻炎, 慢性副鼻腔炎においても正常者より低値を示し, 何らかの関連は否定出来ないと推考した.次に慢性副鼻腔炎の上顎洞粘膜につき病型別にE量を測定し, 又正常家兎及び実験的副鼻腔炎を惹起した家兎副鼻腔粘膜を螢光法による組織化学的検索及びミクロラジオオートグラフイにより観察した所, E定量では線維型は浮腫型, 化膿型に比し低値を示したが, E負荷による変動はいずれの型にもほとんど認められなかつた. 螢光法ではEはわずかに上皮, 腺に認められたが正常粘膜と病的粘膜の間に螢光の差は認められず, Eの負荷による螢光の増加も認められなかつた. オートラジオグラムでは上皮, 腺にグレインが観察された.さらに実験的E欠乏家兎の鼻粘膜を全身諸臓器と共に病理紹織学的に検索した所, 全身臓器ではすでに報告されている如き変化を得, 鼻粘膜では短期欠乏群で萎縮変性がみられ, 長期欠乏群では萎縮性が強く, 慢性炎症性所見がみられ, 純然たるE欠乏のみによる変化と断定は出来ないにしてもE欠乏により鼻粘膜にも病的変化を来す事は疑いないと断定した.