著者
張 開駿 賴 勇佢 賴 勇佢
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.363-390, 2016

1979年に発布された中華人民共和国における最初の「刑法典」は,1997年の全面的な改正を経て,いわゆる「新刑法」と称されるようになり,その後,1999年より修正案が相次いで発布されるようになった。現在,中国刑法(上記新刑法と本文で示した単行法をいう)においては,付属刑法規範(我が国でいう行政刑法をいう)は含まれず,刑罰法規の単行法も一つしか存在せず,刑法改正は基本的に修正案の形によって行われている。中華人民共和国においては,刑罰法規の一体性・完全性が維持されているといえよう。そして,2015年8月29日には,2011年の「刑法修正案㈧」を継受しつつ,部分的に発展させたものだと考えられる,いわゆる「刑法修正案㈨」が立法機関によって可決,同年11月1日に施行された。その間に,中国の最高人民法院,最高人民検察院によって,「刑法修正案㈨」についての司法解釈が公表された。この司法解釈によって「刑法修正案㈨」の効力について個々に規定され,改正された犯罪行為や新たに規定された犯罪行為の罪名が確定している。本稿は,中国における直近の刑法改正である同改正の内容を紹介するとともに,あわせて,中国刑法改正における最新の動向を踏まえつつ若干の検討を展開するものである。