著者
赤堀 誠 光本 孝次
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.683-695, 1977-11-25
被引用文献数
1

本報告では,モデル実験を通して,乳牛集団の遺伝的改良に影響を及ぼす要因の評価によって,乳量の遺伝的改良を効率的に為し遂げる育種システムの検討を試みた。モデル実験の変数として,次の7つの育種仮説値を用いた。a)種雄牛頭数,b)種雄牛年間更新率,c)更新種雄牛当たりの候補種雄牛頭数,d)候補種雄牛当たりの娘牛頭数,e)雌牛集団内の能力検定比率,f)雌牛集団の年間更新率,g)候補種雄牛を生産する種雄牛頭数それらの育種仮説値によって,4,608個の育種システムが推定された。結果は次のようであった。1)種雄牛更新率の増加は,候補種雄牛総頭数の増加をもたらし,ΔG_Y(年間遺伝的改良量)を増加させた。検定容量が小さい時,種雄牛更新率は,20%と25%でΔG_Yを最大にした。2)候補種雄牛頭数が,10頭から20頭に増加される時,ΔG_Yの増加は,最大となった。候補種雄牛頭数の増加は,娘牛頭数が減少される時,必ずしもΔG_Yを増加させなかった。3)娘牛頭数が,20頭から30頭に増加される時,ΔG_Yの増加は,最大となった。各種雄牛頭数の育種システムにおいて,娘牛頭数の増加はΔG_Yを増加させた。4)候補種雄牛父牛頭数の増加は,ΔG_Yを減少させた。5)雌牛集団の一世代当たりの近交退化率は1%以下であった。6)各育種システムにおいて,世代間隔は大差なく,ΔG_Yの差に殆んど影響を与えなかった。7)種雄牛頭数の増加はΔG_Yを著しく減少させた。8)ΔG_Yのおおよそ80%が種雄牛の選抜からもたらされた。9)交配率の減少はΔG_Yを減少させた。10)検定率の増加は著しいΔG_Yの増加をもたらした。育種仮説値は,相互に関連し,ΔG_Yの決定に関与している。それゆえ,それらの関連を考慮し,乳牛集団内の遺伝的資源を有効に利用しうる育種システムを検出することが乳牛集団の遺伝的改良を促進するであろう。