著者
岩槻 幸雄 赤崎 正人 吉野 哲夫
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.47-59, 1993-05-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
69
被引用文献数
1

体側に眼状斑を持っヨコスジフエダイと眼状斑を持たないタテフエダイは日本では区別されてきたが, 両者は最近同種としてタテフエダイ, Lutjanus vitta (Quoyet Gaimard) とされた.タテフエダイの特徴は稚魚期に眼状斑を持ち, その眼状斑は成長とともに消えるとされるが, 日本でみられるヨコスジフエダイは生涯この眼状斑を持っており, タテフエダイの記載は不十分である考えられた.そこで両者の再検討を行った.ヨコスジフエダイは体側縦線上に眼状斑を生涯持ち, 前鰓蓋骨後部下縁に小鱗を持たない, 側線鱗数は46上49であり, 背鰭及び臀鰭軟条の伸び率が大きい (背鰭第1軟条1.2-2.0;臀鰭第1軟条1.5-2.2) が, タテフエダイは体側縦線上に生涯眼状斑を持たず, 前鰓蓋骨後下縁に小鱗を持ち, 側線鱗数は49つ2であり, 背鰭及び臀鰭軟条の伸び率が小さい (背鰭第1軟条0.9-1.4;臀鰭第1軟条1.1-1.7) ことで両者は明かに区別出来た.更に両者の分布域は, 台湾西南部及び香港周辺においては重なっているものの, ヨコスジフエダイは南日本から (琉球列島を除く) 山陰地方, 韓国南部, 黄海, 台湾西部及び香港周辺の東アジア大陸棚上の限定した海域にのみ分布するのに対し, タテフエダイはヨコスジフエダイの分布域以外のインド-西太平洋 (日本の琉球列島を含む) の熱帯域から亜熱帯域に広く分布していた.これらの点から, 両者は別種として判断された.尚, ヨコスジフエダイの学名は日本の長崎を模式産地とするL. ophuysenii (Bleeker) が有効であり, タテフエダイの学名はスマトラを模式産地とするL.vitta (Quoy et Gai-mard) が正しい.
著者
赤崎 正人 時任 明男
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.218-228, 1982-03-25 (Released:2010-09-07)
参考文献数
6

1975年9月25日から12月4日まで, 宮崎大学農学部付属水産実験所において, タイ科魚類のキチヌにシナホリンを投与して人工受精を行い, 卵発生を観察するとともに, ふ化仔魚の形態変化について調べた。1.キチヌ卵の平均卵径は0.787±0.022mm (10粒) であり, 油球径は平均0.20±0.005mmであった。2.受精卵は1時間23分で2細胞, 2時間10分で16細胞となり, 4時間35分後には桑実期に達し, 12時間33分後には胚体の形成が始まる。23時間35分後には心臓搏動が確認され, 筋節数25となる。25時間40分後には胚体は卵黄をほぼ2/3周する。29時間後には胚体は卵黄をほぼ1周し, ふ化が始まる。3.キチヌ卵は水温26℃で21時間30分, 16℃で43時間5分, 常温21.5~23.2℃ (平均22.6℃) で29時間でふ化した。水温 (X) とふ化所要時間 (Y) の間にはY=79.072-2.223Xの関係がみられる。4.キチヌのふ化仔魚は全長1.8~1.95mm, 平均1.89mmである。卵黄径は0.84mmで, 油球は大部分の個体で卵黄の中央よりやや後下方に位置する。肛門は卵黄の直後にあり, 体のほぼ中央に位置する。5.ふ化後2日目の仔魚は全長2.75~3.0mmで, 卵黄はほとんど吸収される。肛門は体の前部1/3に移動し, 第5筋節目に開く。3日目には全長2.9~3.1mmに達し, 開口するとともに腸は2回転する。6.ふ化後32日目の仔魚は全長10.0mmとなり, ほぼ鰭条数も定数に達し, 稚魚期に移行したものと考えられる。