著者
赤松 礼奈
出版者
会計検査院
雑誌
会計検査研究 (ISSN:0915521X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.37-52, 2018-03-16 (Released:2022-03-25)
参考文献数
20

本稿は,大阪府内における粗大ごみ収集の有料化が排出量に与える効果を定量的に捉えることを目的とし,1998-2013年の市町村パネルデータを用いて分析を行った。限定された地域の調査ではあるが,42市町村と一定数の対象が確保され,また,収集手数料の変化などの有料化状況を正確に把握できるため,粗大ごみの排出量に与える影響を検証することができる。さらに,有料制と無料収集の自治体が府内に併存し,導入時期に差異があることが活用できるため,差分の差推計が可能である。収集手数料を代理する変数として,任意の3種類の粗大ごみの廃棄を想定しその費用の1㎏当たりの収集手数料を用い,頑強性の確認のため,他の指標も用いた。主要な説明変数は収集手数料,コントロール変数は先行研究にならい,昼間人口比率,平均世帯人員,一人当たり所得とした。推計の結果,有料化の導入が粗大ごみの排出量を有意に低下させることが示された。価格弾力性はおよそ-0.3となった。 本稿の貢献のひとつは,粗大ごみ収集サービスの価格弾力性を,私の知る限り,国内外の研究として初めて推計したことである。価格弾力性推計値はおよそ-0.3であり,これは家庭系一般ごみの先行研究の推計値より高い。理論的に,家庭系一般ごみよりも粗大ごみには代替的な排出手段が多いため,代替効果により価格弾力性は高くなると予想されるが,まさに理論的予想を確認する結果となった。