著者
越智 亮太 多川 孝央 山田 恒夫
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2022-CE-167, no.10, pp.1-8, 2022-11-26

現在,若年層をはじめとして,様々な健康被害へつながりうるインターネット依存傾向が問題とされている.そこで,本研究では,インターネット依存傾向の対策方法としてインターネット上の利他的情報発信に着目し,研究目的としてインターネット依存傾向のリスク要因となるインターネット利用動機を明らかにし,インターネット上の利他的情報発信に対する態度が大きなリスク要因である逃避動機の改善につながる可能性について検討するために,事前調査にて絞り込んだ質問紙項目を利用して,九州大学の大学生 121 名を対象に調査を行った.まず,インターネット依存傾向の分布を調べたところ,突出して高いとされる人は少なく,今回の調査は一般的な大学生の傾向を示す調査として考えられた.インターネット利用動機とインターネット依存傾向との関連性を調べたところ,逃避動機が p<0.01 で有意にインターネット依存傾向との有意な正の関連性が見られ,その関連性は大きく,インターネット依存傾向へのリスク要因として影響が大きいことを確認した.一方で,知的動機,コミュニケーション動機,利他動機は有意な関連性は見られず,インターネット依存傾向へのリスク要因ではないことが示唆された.次にネット利他発信態度とインターネット依存傾向やリスク要因との関連性について調べたところ,ネット利他発信態度の尺度においてはインターネット依存傾向や逃避動機との関連性の可能性が考えられたが,特定の項目(行動)においてはリスク要因である社会的スキルの改善やインターネット利用動機の変化につながり,インターネット依存傾向のリスク改善につながることが示唆された.ネット利他発信態度の高群は,低群と比較してインターネット依存傾向の大きなリスク要因である逃避的インターネット利用動機の割合が小さいことからもリスク要因の改善につながる可能性があることが示唆された.