著者
檜杖 昌則 越智 靖夫 伊村 美紀 山上 英臣
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.4, pp.203-213, 2014 (Released:2014-04-10)
参考文献数
26

フェソテロジンはムスカリン受容体拮抗作用を作用機序とする新規過活動膀胱治療薬である.経口投与後,速やかに活性代謝物である5-ヒドロキシメチルトルテロジン(5-HMT)に加水分解され,血液中にフェソテロジンは検出されない.5-HMTは,ムスカリン受容体のいずれのサブタイプ(M1~M5)に対しても高い親和性を有し,各サブタイプ発現細胞でのアセチルコリン誘発反応,摘出排尿筋のカルバコール誘発収縮および電気刺激誘発収縮を抑制した.In vivoでは,無麻酔ラット膀胱内圧測定試験で,排尿圧力低下,膀胱容量増加および収縮間隔延長作用を示した.さらに,ヒト排尿筋,膀胱粘膜および耳下腺組織における結合親和性,ならびにアセチルコリン誘発膀胱収縮および電気刺激誘発流涎に対する抑制作用の比較から膀胱組織選択的な抗コリン作用が示唆された.また,中枢移行性が低いことが確認され,フェソテロジン投与による中枢のムスカリン受容体機能への影響は少ないと考えられた.フェソテロジンの臨床投与量は4 mgと8 mgである.臨床薬理試験で血漿中濃度は,2用量間で2層性を示した.臨床試験で,フェソテロジンは,プラセボやトルテロジンより過活動膀胱の症状を有意に改善し,その効果は用量依存的であった.実臨床に近い可変用量のデザインを用いた治療満足度試験では,患者の半数が8 mgへの増量を希望し,その結果8割の患者がフェソテロジンの治療に満足と回答した.この結果より,4 mgで効果に不満足でも忍容性がある場合は,増量により満足に至る可能性が示された.日本人を対象とした長期試験では,遅発性の有害事象は認めず,忍容性は良好であった.フェソテロジンは,患者の状態に合わせ4 mgと8 mgを有効に使い分けることで,患者の治療満足度を向上し,OAB治療で重要な治療継続率の向上に繋がることが期待される.