著者
越沢 浩
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和短期大学紀要 (ISSN:02862360)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.156-139, 1995-12-10 (Released:2020-07-20)

The Longest Journey(1907)は、その作品としての評価が劣っていることは作者自身認めているのだが、書いたことを最も嬉しく思っている作品であるとも言っている。一つには作者の伝記的要素が非常に多いことがその理由であろう。この作品の英語は現代英語ではあるが、非常に分かりにくく、また、プロットが把握できない程に、人物の心理や情景の描写が詳細である。女性の描写が余りはっきりしないのは、作者のhomosexualityに起因しているかもしれない。とにかく非常に理解しにくい作品である。最初に梗概を述べ、次に主人公のRickieの友達であるAnsellの視点を追ってみた。哲学を専攻しているAnsellがHegelを読み過ぎたために、特別研究員の選考に失敗したことから、彼の物の考え方には当然その影響があると言えよう。「使徒会」の支配的な思想はG.E.Mooreの哲学であって、 MooreがHegelの哲学に反対していたことは当時の常識と思われるので、Ansellに関しての説明は思いつきではないだろう。 Rickieの運命に対するAnsellの見方はその立場から理解すると納得出来ると思う。少なくとも、自分にとって現在考えられる範囲において、この作品の意味が解明できる視点であると言える。