著者
越野 啓一
出版者
金沢星稜大学
雑誌
金沢星稜大学論集 (ISSN:13473905)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.99-110, 2002-12-01

1997年, 米国財務会計基準審議会(FASB)と国際会計基準委員会(IASC)から, セグメント情報の開示に関して, 従来の会計基準を抜本的に見直した新たな会計基準が相次いで公表され, それぞれ, 1997年12月15日以後および1998年7月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表から発効している。わが国では, 1993年に連結財務諸表規則に盛り込まれたセグメント情報が, 1997年4月1日以後開始する連結会計年度に係る連結財務諸表から全面的な開示が義務づけられるとともに, 1999年4月1日以後開始する事業年度からは, 有価証券報告書等の財務諸表以外の部分でも, より充実したセグメント情報の開示が要求されている。これら3つの会計基準の目的は, 企業経営の多角化・国際化の実態を財務諸表に適切に反映させることで共通しているが, その内容にはかなりの差異がみられる。本稿では, 主として財務分析の視点から, 目的適合性, 信頼性, 検証可能性および比較可能性といった会計情報の質的特徴に注目しながら, これらの基準を比較検討した。その結果, 今日のセグメント情報による財務分析では, 企業間比較はもとより, 同一企業内での期間比較においても新たな分析視角が求められることが確認された。