著者
趙 世明
出版者
大阪産業大学学会
雑誌
大阪産業大学経済論集 (ISSN:13451448)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.31-51, 2019-10

本稿の目的は2008年から急拡大する中国商業銀行のオフバランス業務,いわゆる中国式のシャドー・バンキングについて,経済成長との関連性を分析することにある。金利自由化の進展,中国金融市場は規制緩和の方向に転じる一方,2008年からは金融市場における資金の需給ギャップの拡大により,中国特有のシャドー・バンキングが爆発的に成長した。このような現象は商業銀行が総量規制や窓口制限などのプルーデンス政策を回避するために行われた金融活動であり,「規制裁定(regulatory arbitrage)」という行為として捉えられる。本稿では,経済成長と並行して,中国の融資環境が単純的な人民元貸付からシャドー・バンキングを含めた多様な融資方式へ転換したことを明白にするために,中国人民銀行ホームページにて公表されている人民元貸付,シャドー・バンキングと経済成長の3変数を用いて,ベクトル自己回帰モデル(VAR モデル)による中国シャドー・バンキングの拡大と経済成長との因果関係について統計的な検証を行った。その結果,シャドー・バンキングと人民元貸付両方とも経済成長にグレンジャー因果関係があることが確認された。