著者
趙 輝 李 蘭
出版者
日本比較法研究所 ; [1951]-
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.67-99, 2014

本稿は,日本の共謀共同正犯概念の中国刑法への導入の必要性について検討したものである。中国刑法への共謀共同正犯概念とその理論の導入について,一部の研究者はその必要性を提唱しているが,筆者は,共謀共同正犯理論について多いに学ぶものがあることは認識しつつも,この概念を直ちに中国刑法理論に導入することについては,躊躇を覚えるものである。 日本の共謀共同正犯の理論については,いかに共犯規定に沿った形で再構成し,実行行為概念の明確性を担保するかが課題であると思われるが,一方,中国刑法の組織犯及び理論は,刑法の規定及び基本理論に根本的に矛盾しているとはいえないのではなかろうか。また,組織犯は,共同犯罪において支配的地位にある非実行行為犯の刑事責任を合理的に追及することができると思われる。 しかし,共謀共同正犯の理論と比較して,中国の組織犯の理論には二つの問題点があると思われる。すなわち①組織犯の成立を犯罪集団の中に限定していること,②組織犯の処罰の理論根拠が不明確であること,である。そこで本稿は,共謀共同正犯及び理論の理論的な長所を受け入れ,その理論及び見解を参考にしつつ,中国刑法の組織犯において,その成立範囲を拡大すること,処罰の理論根拠を,共同犯罪の中に占める組織犯の支配的地位に置くことによって,立法及び理論の改善を図ることを提案するものである。