著者
足立 尚登
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.4, pp.215-221, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
43
被引用文献数
3 4

脳が虚血に陥るとたとえ短時間でも後に障害が生じるが,これにはグルタミン酸をはじめとする興奮性神経伝達物質の放出や細胞内Ca2+増加が関与している.ヒスタミンは中枢神経系で神経伝達物質としての作用があり,ヒスタミン神経支配は広く脳全体におよんでいる.虚血時にはヒスタミン神経からのヒスタミン放出も増加し,ヒスタミン神経活動が亢進する.このヒスタミン神経活動を抑制すると虚血による障害が増悪する.また,あらかじめヒスタミンを脳室内に投与しておくと虚血による障害は改善し,逆に,H2受容体遮断によって増悪する.さらに,H2受容体遮断によって虚血時のグルタミン酸やドパミン放出も増加する.以上のことは,脳内ヒスタミンがH2作用によって,興奮性神経伝達物質の放出を抑制し障害を改善することを示唆する.一方,ヒスタミンには血液脳関門の透過性を亢進させる作用や脳浮腫を引きおこす作用があり,これらにもH2作用が関与している.