- 著者
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足立 頼俊
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
量子鍵配送は遠く離れた二者間でランダムなビット列(秘密鍵)を共有する手段の一つであり、BB84や6-state、BBM92、DPSなど、これまでに多くの方式が提案されている。最初に提案されたBB84は2種類の基底で測定して盗聴の有無を判別するが、6-stateは3種類の基底を用いるため、6-stateにおける盗聴有無の判別には、BB84に比べていくらかの優位性があると思われる。これは理想的な単一光子源を利用した場合には正しいことが分かっているが、多光子を放出するような現実的光源では不明であった。私は現実的光源と現実的な光子検出器を利用した場合の6-stateの安全性を証明し、確かに現実的光源においても6-stateの優位性が保たれていることを示した。また、この証明法は拡張したBBM92にも適用できるため、エンタングルメントした状態を取り扱う光源での安全性も包括している。一方で、DPS方式も世界中で非常に注目されている。これは状態の非直交性を利用した方式であるため、BB84などと異なり、多光子からも秘密鍵を生成できる可能性がある。しかし、これまでに理想的な単一光子源、光子検出器を利用した場合の安全性証明しか行われておらず、実際の実験系への適用はおろか、方式の優位性も正確に把握できていなかった。私は理想的な単一光子源を現実的光源に置き換えた際の安全性証明に取り組み、2光子を放出する事象に対し、秘密鍵を生成できることを示した。また、この証明法はどの多光子放出の事象においても、秘密鍵の生成条件を示せる可能性も含んでいる。