- 著者
-
亀田 徹
伊坂 晃
藤田 正人
路 昭遠
一本木 邦治
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.11, pp.903-915, 2013-11-15 (Released:2014-01-07)
- 参考文献数
- 75
救急室や集中治療室で超音波検査(ultrasonography: US)は手軽に利用できるようになり,循環動態の評価のため焦点を絞ったUSによる下大静脈(inferior vena cava: IVC)の観察が広く行われるようになってきた。USによるIVC径(IVC diameter: IVCD)の計測では,IVCDに影響を及ぼす因子を事前に理解しておくことが大切である。患者の状態が安定していれば,体位は通常仰臥位にするが,症例により左側臥位による再評価が推奨される。呼吸はsniff(鼻をすする動作)が適切である。計測部位は一般に肝下面で右房入口部から0.5-3cm程度の位置とする。IVCの縦断像でIVCDを計測するが,事前に横断像で形態を確認しておくことは有用である。表示としてBモードもしくはMモードを選択するが,それぞれのモードの特性を考慮して利用する。IVCDの実測の代用として目測による評価も有用で,素早く施行可能なことからとくに重症患者において利用価値が高い。これまで日常臨床ではIVCDとその呼吸性変動の組み合せで右房圧の推定が行われてきたが,近年欧米ではその推定規準が見直された。またIVCDやその呼吸性変動を指標にすれば,非代償性心不全の診断や水分管理,初期蘇生における循環血液量減少の評価,人工呼吸中の輸液反応性の評価にも有用であるという報告がなされている。急性期診療において焦点を絞ったUSによるIVCの観察を加えることで,より非侵襲的で正確な輸液管理が可能になるかもしれないが,その確証を得るには今後標準化された計測方法と評価基準を用いた臨床研究が必要となる。