著者
車 相龍
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.241-253, 2004-12-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19

農村地域であった大田は, 鉄道, 高速道路などの内陸交通の要地として都市化を経験した。韓国の科学技術拠点はそういう大田の近隣にある大徳で開発された。この大徳研究団地が大田に編入されたことで, 大田は科学技術都市としての新たな発展の転機を迎えた。国の経済危機の影響で大徳研究団地の雇用が不安定化し, 起業家の道を選んだ研究員が増えたことで, 大田では大徳研究団地を中心とするベンチャー企業集積地である大徳バレーが形成された。これは先端技術産業地域として発展し始めた大田の地域変化を意味する。このような大田における地域変化には, 国や自治体による多様な地域政策的な介入が作用してきた。さらに, 近年, 大田では大徳バレーに基づく革新の持続・強化を目指す新たな地域政策が展開されつつある。ここで革新とは「知識創造による新価値の創出をもたらす新結合」を指す。大田が空間的・主体間・政策的な新たな結合を繰り返しながら経験した地域変化は, 革新を支える関係の構造, すなわち「革新の地域構造」の形成と発展をもたらしたといえる。