著者
石川 順三 後藤 康仁 辻 博司
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.半導体プロセス用大電流負イオン源と中電流負イオン注入装置の開発:半導体への負イオン注入に必要な硼素、燐、珪素、炭素など種々の負イオンを連続して数mA得供給できるRFプラズマスパッタ型負重イオン源(RFNIS)を開発した。また、小型の負イオン源を搭載した最大加速電圧140kVの中電流負イオン注入装置を開発した。本装置はクリーンブ-ズを有しており、実プロセスと同じ清浄な条件で負イオン注入が可能である。2.負イオン注入に伴う帯電現象の解明:負イオン注入時の絶縁電極の帯電は数Vであることを理論的に解明し、これを二次電子放出比とエネルギー分布測定から証明した。また、絶縁物の表面帯電電位の計測法として二次電子エネルギー分析による方法を考案し、これで半導体製造に用いられる絶縁物の負イオン注入による帯電電位は負の10V程度で有ることが判明した。更に、絶縁物の帯電機構として電気二重層モデルを提案した。3.負イオン注入デバイスの評価:ゲート酸化膜の劣化試験用デバイスに負イオン注入を行って評価して、負イオン注入が実際の半導体製造や次世代ULSI製造工程に利用できることを証明し、実用化の見通しを得た。4.極低エネルギー負イオンビーム蒸着の研究:大電流負イオンビーム減速蒸着装置を製作した。極低エネルギーにおけるビームのエネルギー幅は10eVと小さく、30eV程度に減速してもエネルギー制御性が有ることが判明した。更に、炭素負イオンを50eV〜400eVの極低エネルギーで蒸着し、その評価を行った。特性測定の結果、蒸着したカーボン膜は非晶質ダイヤモンドライクカーボン薄膜であることが判った。5.粉末への無飛散イオン注入法の開発:微粒子粉末へのイオン注入での粒子飛散問題に関して、飛散機構を理論的に解明し、理論や実験から負イオンによる無飛散イオン注入法を開発し、実用化の見通しを得た。