著者
辻本 久美子 太田 哲 藤井 秀幸 小松 満
出版者
土壌物理学会
雑誌
土壌の物理性 (ISSN:03876012)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.3-24, 2022-07-20 (Released:2022-08-02)
参考文献数
60

世界各地の土壌水分を毎日観測する手法として, 水循環変動観測衛星GCOM-Wに搭載されたマイクロ波放射計AMSR2による観測輝度温度を用いる手法がある. 本研究では,そのアルゴリズム全体の中で, 湿潤土壌の誘電率と体積含水率とを関連づけるモデルについて, 既存モデルの比較検討と室内実験による検証を行った. 特に,観測周波数や土性の違いが湿潤土壌の複素誘電率に与える影響に着目した. さらに,土壌水分特性と誘電特性の関連に着目し, Pedotransfer関数を用いて土壌水分特性に基づいて誘電率を推定する手法を提案した. Dobsonモデルに対してMironovモデルの適合範囲が広いこと, Mironovモデルによる吸着水の量と誘電率の値には他モデルとの差異が大きく疑問が残ること, 風乾時土壌水分量と吸引圧500 MPa下での水の誘電率を用いると 実験土壌に対する複素誘電率がよく再現できること,が示された.