著者
三神 厚 辻野 典子 齊藤 剛彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1034-I_1048, 2013 (Released:2013-06-19)
参考文献数
30

昭和南海地震において,高知市に襲来した津波波高はさほど高くなかったにもかかわらず,河川堤防が決壊し,高知市は長期にわたり甚大な浸水被害に苦しめられた.当時の地震被害調査報告によれば,高知市内の11箇所で堤防が決壊したと報告されているが,著者らの知る限り,断片的な被害情報はあるものの,それらが1つにまとめられた資料はない.著者らは利用可能な様々な資料をもとに,昭和南海地震による高知市の堤防被害箇所の推定を行ってきた.最近になり「高知市震災復旧工事箇所」なる資料を見出し,また高知大学地震観測所より被害写真の提供を受けたので,著者らの推定結果との比較を行ったところ,概ね整合した.「高知市震災復旧工事箇所」等,新たな情報をもとに堤防被害の要因について再検討したところ,1600年以降の埋立地や地形分類,Vs30の値が被害の程度を左右していることなどがわかった.