著者
近藤 勝直
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、道路審議会(旧)の答申をふまえ,高度情報化時代に対応した都市高速道路における料金体系の再構築をめざして研究したものである。利用者の負担の公平に配慮しつつ、利用者の便をはかり、かつ料金収入の確保のため、料金体系の弾力的運用方法について提案する。現行の料金体系は2車種・均一料金制(入路前払い)であり、これは、料金ブースでの料金収受時間の短縮と出路ブース建設費の節約がその背景にある。しかし、実行段階に入ったETCを前提とすると、車種判別の自動化はもちろん、入口出口はノンストップであり、料金収受の必要はなく、後納方式なり前納方式なりで、走行距離、利用区間、時間帯、交通量(需要)などに応じた課金が可能となる。今回検討したのは、とくに対距離料金制の導入であり、短距離では現行より値下げし、長距離では値上げとなる。この新しい料金体系が交通量におよぼす効果をシミュレートし、渋滞や環境、そして料金収入などに与える影響を評価した。考え方としては、新制度で料金収入が増加することは利用者の理解を得にくいので、料金収入一定の条件下でのありうべき料金水準について検討することがねらいとなった。現在までの試算では、短距離の値下げは短距離トリップを増加させる。これによって、容量的に問題となる路線・区間ができる。一方、長距離の値上げによっては広域的な高速道路を必要とするトリップ(とくに物流トラック)に影響し、これが一般道路に転換するようだと環境上は好ましくない。かように、現行制度を改変すると、課金の合理性は確保できるが、一方で各種の新しい問題も発生する。また、現在試行されている「環境ロードプライシング」についても検討を加えた。これも、なかなか悩ましい問題であり、具体的には、阪神高速道路神戸線(環境問題あり)と同湾岸線(環境問題なし)の2路線間で料金格差によって、問題の神戸線から湾岸線に交通量を誘導しようとするものである。これも計算上も実績上も神戸線の料金弾性値が低く、したがって期待通りの転換がすすまない。神戸線の利用者が値上げについて来る。かえって増収にもなってしまうのである。この原因は上記2路線が真に代替ルートを形成していないことと、環境問題地域前後での車両の入退出が多く、トリップのODを再度精査する必要がある。これらを明らかにした上で、実行のある環境政策としての料金政策による交通誘導をはかる必要があるとの結論を得た。(詳細は印刷した報告書を参照のこと)今後は、さらに車種区分についても考察を加えたい。これは車種ごとに行動パターンやルート選択行動が異なるためである。環境問題が大型車のPM排出にあるとするならば、これに限定した施策が展開されなければならない。そのためには車種ごとの検討が必要である。
著者
近藤 勝直 西井 和夫 衣笠 達夫 長峰 太郎
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.各種公益サービス事業の価格・組織制度の理論的整理:事業形態およびサービスの質,公共財と私的財の性格,そして事業展開エリア(国,文化)等の違いにより価格制度が異なる.また事業の目的関数(利益最大か収支均等か)によっても違いがある.本研究ではこれら各種の道路料金理論について総括的にレビューした.日本の高速道路の場合は基本的には公設公営であり,償還制度の元で価格(料金)が設定されるが,国際的にはバライエティがある.ただ,償還に用地費や建設費や資本費を含めると,償還後に矛盾が露呈する.これらを償還からはずしたとき料金水準はいくらになるか,またいくらにすればよいのかについて慎重な検討が必要である.本研究では,建設主体,資金提供者,運営主体,さらに建設後あるいは供用開始後一定期間後の移管,等々の形態についても考察した.2.新しい理念下での価格づけ:料金改定がままならない現在,かといって価格が低いと潜在需要が顕在化し「高速道路」はなくなる.では高速サービスを維持してゆくための水準を求めるために混雑料金や環境税の概念も導入する必要がある.そして,その理念が公共的であれば公的助成が正当化される.しかし高速サービスはあくまでも私的財であるので受益者負担原則が適用される.ここではTDMの観点からいくつかのプライシングについて理論的検討と計算による効果について検証した.(計算例については機会を見て公表の予定である.)