著者
近藤 哲男
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.107-115, 2008-05-25 (Released:2008-05-28)
参考文献数
41
被引用文献数
16 16

最近のナノテクノロジーの著しい進歩は,さまざまな材料創製の概念を変えてきた。天然素材においても,その影響は大きい。植物体の骨格を形成しているセルロースや昆虫や甲殻類の外皮の主成分であるキチンなどのいわゆるバイオマス資源は,もともとナノファイバーから高次の構造へと天然ビルドアッププロセスにより,その構造が構築されている。そのような構造ができあがっている天然素材を,有効に用い,しかも自然にやさしいプロセスでナノ機能素材へと変換する試みが21世紀に入って急速に展開してきた。本稿では,最近のセルロースナノファイバーの潮流について,その基礎から展開までの概略を述べる。また最近,著者らも,トップダウン的加工法として,天然セルロース繊維を表面から分子やナノレベルの分子集合体を引き剥がすことにより微細化し,最終的にナノ分散水化させる水中カウンターコリジョン法を開発した。この手法についても併せて紹介する。