著者
堀 千明 吉田 誠 五十嵐 圭日子 鮫島 正浩
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.173-188, 2019-10-25 (Released:2019-11-02)
参考文献数
83

木材腐朽菌は植物細胞壁の主要成分(セルロース・ヘミセルロース・リグニン)を効率的に分解する。この特徴的な分解能力やその機能を担う酵素について,これまで様々な応用を見据えて精力的に研究がなされてきた。最近では次世代シーケンサーの登場により,すでに250種以上の菌類のゲノム情報が取得され,それに基づく多様な腐朽菌が保有する木材分解メカニズムの解析について新しい知見が報告されている。本稿では,まず腐朽菌による木材分解現象に関するこれまでの研究の経緯を説明した上で,最近の比較オミックス解析で明らかにされた腐朽形態の違いの要因となる分子メカニズムについて紹介し,さらに分子時計解析から見えてきた木材腐朽菌の起源や進化について考察を行った。
著者
斎藤 幸恵 信田 聡 太田 正光 山本 博一 多井 忠嗣 大村 和香子 槇原 寛 能城 修一 後藤 治
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.255-262, 2008-09-25 (Released:2008-09-28)
参考文献数
11
被引用文献数
4 6 4

重要文化財福勝寺本堂に用いられていた垂木で,施工年代が異なり(1500,1662,1836年頃),品等・使用環境が似通ったものの劣化調査を実施した。供試試料は全てアカマツである。ケブカシバンムシによる食害が,古い材ほど著しく進んでいた。食害部分を除いた,木材実質の経年変化を検討するために,未被食部のみを取り出して供試した。古材未被食部の酸化開始温度,および微小試験片の縦方向引張ヤング率は,現代材より低い傾向にあったものの,経年によって低下の程度が増すとは断定できなかった。未被食部のX線回折から求めたセルロース相対結晶化度には経年による増大の傾向が見られ,縦方向引張ヤング率との間に,弱い負の相関が見られた。また古い材ほどホロセルロース率が低下する傾向があり,経年による未被食部の成分変性を示唆していた。木材実質そのものの変性よりはどちらかといえば虫害の方が,実用上の性能低下に大きく影響すると考えられた。
著者
小埜 栄一郎
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.232-237, 2015-05-25 (Released:2015-06-01)
参考文献数
26

植物は有機化合物の宝庫であり,人類は経験的にそれらの効能に基づいて食品(色素,香辛料,甘味料)や薬として利用してきた。今日では科学技術の進展により化合物の構造,生合成経路,および生理活性(機能性)の理解が進んでいる。植物由来の有用物質の多くは二次代謝物または特化代謝物(Secondary metabolitesまたはSpecialized metabolites)と称され,具体的にはタバコのニコチン,コーヒーのカフェイン,チャのカテキン,ゴマのセサミン,ウコンのクルクミンなど私たちの生活に関係が深いものが多い。これまで人類は様々な手法で植物を改良してきたが,新しい技術開発に伴って交配育種から,形質転換に寄る機能改変,ゲノム情報に基づくゲノミックセレクションへと大きく変容してきている。ここでは次世代シークエンサーによるゲノム時代の有用遺伝子の探索事例を紹介すると共に,先駆的な代謝工学による酵母に寄る植物二次代謝物の生産事例を紹介する。
著者
中西 遼 小幡谷 英一
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.259-265, 2016-11-25 (Released:2016-11-29)
参考文献数
5

雅楽に用いられる篳篥のリード(蘆舌)には葦(Phragmites australis)が用いられる。蘆舌には淀川流域の鵜殿地区で採れる葦が最適とされているが,その理由は定かではない。本研究では,代替産地や合理的な選別法を検討する上で不可欠な良材の条件を明らかにするために,熟練者によって選別された葦材の組織構造,密度および横圧縮強度を他の葦のそれらと比較した。同一節間内で比較すると,上部ほど肉薄で密度が高かった。この違いは外皮の内側にある柔細胞層の厚さの違いによるものであった。良材と選別された葦材は,他の葦よりも肉厚でやや密度が高かったが,その差は僅少であった。一方,良材は他の葦よりも明らかに高い横圧縮強度を示した。葦の稈から蘆舌を作る際には,稈の一端をつぶさなければならない。そのため,薄くつぶしやすい節間内上部が使われ,かつ,横圧縮に対して壊れにくい葦材が選ばれるものと推察された。
著者
須藤 竜大朗 河原 大 落合 陽 青木 謙治 稲山 正弘
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.201-211, 2019-10-25 (Released:2019-11-02)
参考文献数
22

MDFは加工性・均質性・環境性能に優れた木質系面材料であり,その構造利用が望まれている。しかし構造利用される時に想定される釘一面接合部の性能については基礎データが不足している。基礎データの収集を目的として主材の樹種(スギ,ヒノキ,ベイマツ),MDFの厚さ(9,12,15,18,21,24mm),釘種類(N50,CN50,CN65,CN75)をパラメータとして釘一面せん断試験を実施した。降伏モードはMDFと製材のそれぞれの支圧耐力の差が大きいかによって決定し,破壊モードはMDFの釘頭貫通力と製材の釘の引抜耐力の大小で決定した。釘接合部の降伏耐力は釘の長さ,径が大きいと上昇し,用いた製材の支圧強度にも影響が見られた。靱性特性はMDFの釘頭貫通力と製材の釘の引抜耐力の小さい方で決定されるため,その二つの耐力が近い時に最も高いという結果になった。
著者
桃井 尊央 大林 宏也 栃木 紀郎 小林 純 故塩倉 高義
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-8, 2014-01-25 (Released:2014-01-28)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

前報で構築した東京都西多摩郡奥多摩町に生育する7樹種の樹木年輪指数(年輪幅指数:IWar,年輪内平均密度指数:IDar)と同町で観測された気候変数との関係を検討した。その結果,樹木年輪指数と気候変数との間で認められた有意な相関関係の中には,多くの樹種間に共通した相関関係が,(1)IWarと当年1月から3月の月平均気温との間,(2)IDarと当年5月から8月の月平均気温との間,(3)IDarと前年5月から7月の月平均気温との間,(4)IDarと当年6月から9月の月降水日数との間で確認された。さらに,上記した4つの相関関係には樹種による違いも確認できた。また,月平均気温と月最高気温,月最低気温は,樹木年輪指数との相関関係において似た傾向が認められたが,月最高気温の方が月平均気温や月最低気温よりも樹木年輪指数との間に有意な相関関係が多く,その相関係数の絶対値は大きかった。
著者
滝本 裕美 安江 恒 徳本 守彦 武田 孝志 中野 達夫
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.121-127, 2013-05-25 (Released:2013-05-28)
参考文献数
16

106年生の高樹齢カラマツ(Larix kaempferi Carr.)造林木5個体を対象として,仮道管二次壁中層(S2層)のセルロースミクロフィブリル傾角(以下MF傾角)をヨウ素法により測定した。MF傾角の年輪内変動は形成層齢によらず,早材では外側に向かうにつれて減少し,晩材では早材よりも変動が小さかった。早材のはじめから早晩材境界にかけてのMF傾角の減少傾向は肥大成長速度の大小に関わらず,形成層齢の増加に伴い緩やかな減少から急激な減少へと変化した。MF傾角の樹幹内半径方向変動は,晩材では形成層齢の増加に伴い急激に減少した後,緩やかな減少に変化し,30年輪以降その変動は小さくなった。早材では形成層齢の増加に伴う減少は認められなかった。30年輪以降において年輪幅と晩材MF傾角には有意な相関は認められないことから,成熟材部の晩材MF傾角は年輪幅の変動の影響を受けないといえる。
著者
田鶴 寿弥子 松本 康隆 中山 利恵 杉山 淳司
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.110-116, 2019

<p>従来の茶室建築研究は,様式,構造,意匠,変遷などに重きを置いたものが多く,使用されている部材の樹種については数寄屋大工や建築家の目視に頼ったものや伝承によるものを主としていた。近年,樹種識別の重要性が周知され,茶室における科学的な樹種調査がようやく行われつつある。本研究では,数寄屋大工笛吹嘉一郎による三重県伊賀市に位置する芭蕉翁故郷塚「瓢竹庵」に注目した。瓢竹庵では,嘉一郎自筆と考えられる茶室見積書が現存しており,柱や構造材,天井や床など,計画段階での部材ごとの樹種や数量などが74点について記されている。本研究ではそのうち32部材について樹種調査を行い,当時の用材観ならびに材料変更について明らかとすることができた。</p>
著者
小峰 早貴 前田 啓 信田 聡
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.189-195, 2017

<p>バスーンリード製作の際に行われている葦(<i>Arundo donax</i> L.)表皮の色や模様を用いた材選定の妥当性を検証するため,市販のリード用葦材に対して表皮の色情報を測定し,両端自由たわみ振動試験で求めた葦材の振動特性との関係を検討した。表皮の色情報としてスキャン画像の<i>L</i><sup>*</sup>,<i>a</i><sup>*</sup>,<i>b</i><sup>*</sup>の平均値と標準偏差を求めた。結果として模様以外の部分の色が明るく色の薄い材は動的ヤング率が低くtanδが大きいという傾向が見られ,既存の葦材選定方法と同じ傾向であった。一方で表皮に占める模様面積の割合に関しては振動特性との相関はあまり見られず,模様による葦材選定が有効であるという裏づけは得られなかった。 </p>
著者
大村 和香子 前田 恵史 谷川 充 桃原 郁夫 木口 実 吉村 剛 竹松 葉子 源済 英樹 野村 崇 金田 利之 三枝 道生
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.26-33, 2011
被引用文献数
3

日本産および外国産の15樹種の心材を用い,ヤマトシロアリおよびイエシロアリを対象とした室内試験により耐蟻性を評価した。さらに,各樹種試験体を全国9カ所の野外に非接地・非暴露状態で設置し,加害シロアリ種および気象条件と食害指数との関係を検討した。室内試験の結果,イエシロアリ,ヤマトシロアリに対して,耐候操作を経ないレッドウッド,スギ,カリーが,耐蟻性の指標に設定した耐蟻インデックス値80%を下回った。一方,耐候操作により,ヤマトシロアリではヒバ,レッドウッド,スギで耐蟻インデックス値が顕著に減少したのに対して,イエシロアリでは耐候操作前後における耐蟻性の相違は,ヤマトシロアリの場合ほど顕著には認められなかった。野外試験では,高比重の広葉樹材の中ではカリーが高い食害指数を示し,耐蟻性が低いと評価された。また試験地の違いによって,同期間の暴露であっても,供試樹種の食害指数が異なることが明らかとなった。
著者
山本 健 片岡 厚 古山 安之 松浦 力 木口 実
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.320-326, 2007 (Released:2007-11-28)
参考文献数
7
被引用文献数
6 5

紫外線から可視光線(278~496 nm)を波長幅約20 nmに分光して6樹種の木材に照射し,照射光の波長と材の変色との関係を調べた。照射前のCIELAB色空間におけるL* 値が70以上,a*値が8未満の淡色材には,紫外域での暗・濃色化と,可視域での明・淡色化が見られた。厳密には,暗・濃色化と明・淡色化の境界波長は樹種によって異なり,針葉樹では,境界波長が広葉樹よりもやや長波長側に見られる傾向があった。一方,照射前のL* 値が70未満,a* 値が8以上の濃色材の変色パターンは複雑であったが,抽出処理後の照射では,淡色材の変色傾向にやや近づく傾向が見られた。照射前の木材の色調と分光照射による変色の関係について,照射前のL* 値が小さい材ほど短波長の光でL* 値が減少から増加に転じ,照射前のa* 値が大きい材ほど短波長でa* 値が増加から減少に転じる傾向があった。しかし,b* 値にはこのような関係は見られなかった。
著者
小山 太 清水 邦義 松原 恵理 吉田 絵美 近藤 隆一郎
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.370-376, 2011-11-25
参考文献数
23
被引用文献数
1

スギ製材工程で大量に発生する樹皮の有効利用を図るため,スギ樹皮のアンモニア吸着能に着目した鶏ふん堆肥化過程の臭気低減効果について検討した。粉砕処理したスギ樹皮を620ppmに調製したバッグ内のアンモニアガスと5分間接触させたところ99.5%のアンモニアが除去された。鶏ふん堆積物の表面をスギオガクズまたはスギ樹皮で被覆し,堆肥化過程で発生するアンモニアの吸着を試みたところ,スギオガクズは1g当たり11mgのアンモニアを吸着したのに対し,スギ樹皮では33mgに達した。堆肥化後,スギ樹皮中の窒素の形態を調査したところ,水溶性窒素が22%,イオン交換性窒素が23%,有機態窒素47%であり,高い陽イオン交換能に伴うイオン結合だけでなく,共有結合による除去も示唆された。スギ樹皮は,アンモニアガス発生源の表面を被覆するだけで発生量を抑制でき,安価で簡便な臭気対策資材としての活用が期待される。
著者
設楽 稔那子 吉田 宏昭 上條 正義 藤巻 吾朗 山口 穂高
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.149-161, 2017

<p>我々は木材製品を見かけると思わず手に取ることがあり,視触覚という複合的な感覚によって木材製品を評価している。本研究では,木材製品における視触覚的な印象形成に触覚と視覚のどちらが優位か木材4種類と塗装2種類を条件として,1)見ずに触る,2)触らないで見る,3)見ながら触るといった3種類の感覚ごとの官能検査を実施し,重回帰分析によって視触覚印象形成に対する触覚と視覚の関係の解明を試みた。その結果,視触覚に対して全般的には視覚の影響が優位であったが,温冷感,粗滑感,乾湿感といった触覚受容器から取得される情報による印象は触覚の影響も強かった。また,触覚と視覚と物理特性との関係性を検討したところ,木材評価時の印象は木材の明るさに起因する視覚と摩擦に起因する触覚に関係があることが示唆された。</p>
著者
大原 誠資
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.59-68, 2009-03-25 (Released:2009-03-27)
参考文献数
70
被引用文献数
1 2

樹木の樹皮には,タンニンと総称されるポリフェノール成分が多量に含まれている。樹皮は日本の製材工場から発生する主な残廃材の中で,最も利用率が低いことが報告されている。木質バイオマス資源の利活用が重要な課題となっているが,現状では樹皮の用途は限られており,その特性を活かした付加価値の高い利用法の開発が有効である。縮合型タンニンは樹皮に広く分布しており,様々な工業原料や生理機能性物質としての用途開発を目指した研究が行われている。また,タンニンの有する有用機能はタンニンの化学構造と密接に関係していることから,化学変換,酵素変換を行うことでその機能を増強させる改質が行われている。本稿では,樹皮タンニンの化学特性及び機能増強や有効利用のための化学・酵素変換についての最近の研究成果を概説するとともに,今後の樹皮タンニンの利活用の展望について述べる。
著者
塔村 真一郎
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.27-41, 2016-03-25 (Released:2016-03-28)
参考文献数
118
被引用文献数
1

近年の大規模木造建築物には,大断面の構造用集成材やCross-Laminated Timber(CLT)のような構造用木質材料の使用が不可欠である。構造用木質材料の強度性能を設計通り発揮させるためには,接着が適正に行われていることが前提となり,使用する接着剤も耐久性への信頼が高いものに限られる。構造用木材接着剤としては,長い間レゾルシノール系樹脂接着剤などが使われてきたが,近年水性高分子-イソシアネート系接着剤や,最近欧米では1液ポリウレタン接着剤も使われ始めている。これらイソシアネート基の反応をベースとした接着剤は,レゾルシノール系接着剤とは化学構造や物性が異なる。したがって,構造用木材接着剤の要求性能や評価法について再検討する必要があり,規格も各国で整備されつつある。そこで本稿では,現行の構造用木材接着剤に要求される接着性能に関する規格とその評価法について概説する。
著者
杉浦 立樹 山岸 賢治 平井 浩文 河岸 洋和
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.382-387, 2010-11-25 (Released:2011-03-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

高活性リグニン分解菌Phanerochaete sordida YK-624株の産生する,新規リグニンペルオキシダーゼの1種であるYK-LiP2をコードする遺伝子ylpAを高発現する形質転換体A-11株のリグニン分解特性を調査した。ブナ木粉培地においてA-11株は野生株より高いリグニン分解活性を示し,4週間培養後のリグニン分解率は野生株と比較して7.6%高い値を示した。また,その時のリグニン分解選択性も野生株より高い値を示した。A-11株を接種した木粉中のLiP活性は野生株のものより高く,また組換えylpAの転写解析より,A-11株は培養期間を通して安定して組換えylpAを転写していることが判明した。これらの結果より,ylpAの高発現がP.sordida YK-624株のリグニン分解活性を上昇させたことが示された。さらに,市販のセルラーゼを用いた酵素糖化性について検討したところ,A-11株により処理した木粉は野生株のものより高い糖化性を示した。
著者
末吉 修三 森川 岳
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.311-316, 2016-11-25 (Released:2016-11-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1

事務所の内装写真を用いた聞き取り調査で得られたテキスト型データの計量的分析に基づいて,事務所の内装に使われた木材がもたらす視覚的影響を検討した。被験者に対して20枚の事務所内装写真を提示し,類似の印象を持つグループに分けさせた後,グループごとにその会社の印象およびそのような印象を持つ理由を尋ねた。グループに分けられた写真および聞き取った回答について,非計量的多次元尺度構成法による解析を行った。被験者には,写真に木質と非木質の内装が含まれることを説明していないにも関わらず,2次元空間に木質内装と非木質内装の写真が分かれて位置付けられ,木質内装写真は「木材」の近くに位置付けられた。その「木材」の周辺に「あたたかい」,「快適」,「静か」,「明るい」,「友好的」など良好な事務所環境あるいはその会社や社員に対する好印象につながる語が位置付けられ,事務所の内装で木材が好ましい視覚的影響をもたらすことが示唆された。
著者
孟 慶軍 平井 卓郎 小泉 章夫
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.281-288, 2008-09-25 (Released:2008-09-28)
参考文献数
18
被引用文献数
9 15

この研究では,現在情報の不足している木材と各種構造用面材との摩擦係数測定を実施した。針葉樹合板,広葉樹合板,OSB,MDF,火山性ガラス質複層板(VSB),鋼板について,木材および面材の繊維方向(強軸方向)のすべての組み合わせについて,摩擦係数を測定し,以下のような結果を得た。1.静止摩擦係数は0.2から0.4で,概観的にMDF>針葉樹合板>広葉樹合板>VSB>鋼板>OSBの順となった。2.動摩擦係数の静止摩擦係数に対する比は0.6から0.9で,平均値ではVSB>鋼板>広葉樹合板>OSB>針葉樹合板>MDFの順となった。3.摩擦係数は木材の比重と負の相関を持つことがわかった。4.木材の繊維に直交方向の摩擦係数は繊維に平行方向の摩擦係数より大きかった。合板表板の繊維方向についても,同様な傾向が見られたが,定量的な差は少なく,またOSBのストランド配向方向の影響はごくわずかであった。
著者
薩如拉 中村 晋平 葭谷 耕三 棚橋 光彦
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.193-200, 2012
被引用文献数
2 1

竹材の利用用途の拡大を目指し,丸竹を外皮及び内皮をつけたまま完全展開し,平板化することを試みた。3-5年生のマダケ(円周240-275mm)を高圧水蒸気で軟化し,横型圧入装置を用いて外周を徐々に絞り込みながら内周220mmのパイプ内に圧入した。得られた圧縮丸竹に軸方向に沿って一か所割れ目をいれ,温水(70-80℃)中で加熱しながら平板状に展開した。予備展開された竹材をステンレス製の治具にはさみ,プレスによって完全に平板に展開した。圧縮時の最適軟化条件は140℃-30分処理であり,圧縮の成功率および平板展開の成功率により,最適圧縮率は14%-19%であった。これは圧縮により試料の外径が未圧縮の試料の内径よりも小さくなることで,展開時に要求される内周の伸びを満たすことができるために完全平板展開を容易に実現できたものと考えられる。平板化された竹材を180℃-4分の高圧水蒸気で形状固定処理を行い,完全平板展開竹材を得ることに成功した。
著者
大賀 祥治
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.55-57, 2005 (Released:2006-02-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1