著者
近藤 寿郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.591-599, 1992
被引用文献数
2 1

IFN療法を行ったC型慢性肝炎例より,血清ALTが1年以上持続的に正常化した症例と正常化しなかった症例を各々14例ずつ無作為に選び,血清中のHCV-RNAの推移ならに,C100-3抗体,KCL-163抗体,CP-9抗体およびCP-10抗体を定量的に測定し,その推移を検討した.HCV-RNAが投与終了12ヵ月後以降陰性であったのは有効例の8例のみであった.有効例では投与終了12から18ヵ月後に,C100-3抗体価は投与前陽性の11例中10例で,KCL-163抗体価は13例中12例で投与前値の25%以下に低下した.さらに,HCV-RNA陰性化例では8例中7例でCP-9抗体価とCP-10抗体価がともに投与前値の25%以下に低下したが,HCV-RNA非陰性化例のcore抗体の推移には有意な変化は認めなかった.一方,無効例の各抗体価には有意な変化は認めなかった.この成績はcore抗体の推移がHCV-RNAの消長を密接に反映することを示しており,IFNの抗ウイルス効果の指標として有用と考えられた.
著者
近藤 寿郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.591-599, 1992-08-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

IFN療法を行ったC型慢性肝炎例より,血清ALTが1年以上持続的に正常化した症例と正常化しなかった症例を各々14例ずつ無作為に選び,血清中のHCV-RNAの推移ならに,C100-3抗体,KCL-163抗体,CP-9抗体およびCP-10抗体を定量的に測定し,その推移を検討した.HCV-RNAが投与終了12ヵ月後以降陰性であったのは有効例の8例のみであった.有効例では投与終了12から18ヵ月後に,C100-3抗体価は投与前陽性の11例中10例で,KCL-163抗体価は13例中12例で投与前値の25%以下に低下した.さらに,HCV-RNA陰性化例では8例中7例でCP-9抗体価とCP-10抗体価がともに投与前値の25%以下に低下したが,HCV-RNA非陰性化例のcore抗体の推移には有意な変化は認めなかった.一方,無効例の各抗体価には有意な変化は認めなかった.この成績はcore抗体の推移がHCV-RNAの消長を密接に反映することを示しており,IFNの抗ウイルス効果の指標として有用と考えられた.
著者
菊地 勝一 近藤 寿郎 生田 真一 飯田 洋也 相原 司 安井 智明 柳 秀憲 光信 正夫 覚野 綾子 中正 恵二 山中 若樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.626-633, 2009 (Released:2009-12-10)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を背景肝とした肝細胞癌(HCC)の発癌病態を検討するため,当施設で治療を行ったHCC症例中,非B非C型で,背景肝がNASHと診断された10例についてその臨床病理像や背景因子を検討した.【対象.方法】当施設で肝切除(173例)又はablation(216例)を行ったHCC 389症例中,HBs抗原・HCV抗体ともに陰性であったのは29例(7.5%)であった.そのうち臨床病理学的にNASHと診断された症例10例(2.6%)を対象とし,宿主因子,背景肝病理組織,血液検査所見,背景肝機能,腫瘍因子について検討した.【成績】(1)性・年齢は,男性7例,女性3例,平均年齢70.9±8.1歳であった.(2)Body Mass Index(BMI)が25 Kg/m2以上の肥満者は6例(60%)であったが,生活習慣病の合併率は,糖尿病6例(60%),高脂血症2例(20%),高血圧7例(70%)であった.(3)背景肝病理組織は10例中4例(40%)が肝硬変,6例(60%)が脂肪肝炎であった.また脂肪肝炎のstageはBruntの分類でS1:2:3=1:2:3と,線維化の程度が軽度から中等度の例が半数を占めた.(4)肝予備能を反映する血清アルブミン(Alb)値とプロトロンビン(PT)活性は肝硬変群においても,それぞれ4.1±0.5 g/dl,79.0±8.2%と正常であった.さらに肝硬変群をChild-Pughで分類するとAが3例,Bが1例であった.一方ICG R15は肝硬変群が31.8±25.0%であったが,慢性肝炎群においても20.5±16.5%と高値であった.(5)腫瘍因子に関しては2個以上の多結節病変を有する症例が9例(90%)で,このうちいずれかの結節が高分化型HCCであった多中心性発生は6例(67%)であった.【まとめ】NASH由来と診断されたHCCは,高齢で生活習慣病の合併率が高頻度であった.背景肝組織は肝硬変を合併しない脂肪肝炎からの発癌が多く,多中心性発生が高頻度であった.【結語】NASHに合併したHCCの背景肝は60%が脂肪肝炎であり,67%が多中心性発癌であった.また,脂肪肝炎例においては線維化が軽度の症例も認められ,HCCの合併を考慮した厳重なフォローが必要と考えられた.