著者
中村 光宏 池内 浩基 中埜 廣樹 内野 基 野田 雅史 柳 秀憲 山村 武平
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.1008-1011, 2005-05-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

[目的]潰瘍性大腸炎(以下UC) 手術症例の術前ステロイド総投与量とその副作用について検討した.[方法]1984年8月から2003年12月までに当科で経験したUC手術症例634例のうち術前のステロイド総投与量を算定できた582例を対象とした.[結果]ステロイドのmajor side effectの中で最も多かったのは,骨粗霧症で66%に認められた.骨粗鬆症に対する術後の薬物療法は,術後12カ月で有意な改善を認めたが,正常値には至らなかった.不可逆的な副作用である白内障,大腿骨頭壊死,胸・腰椎圧迫骨折は,ステロイド総投与量が7,000~10,000mgにかけて有意に増加していた.[結論]ステロイド総投与量が7,000mgを越える症例では,不可逆性の副作用の出現に注意し,出現前の手術が望ましいと思われた.また,最も多い副作用である骨粗鬆症の治療には術後1年以上の薬物療法が必要であることが明らかとなった.
著者
菊地 勝一 近藤 寿郎 生田 真一 飯田 洋也 相原 司 安井 智明 柳 秀憲 光信 正夫 覚野 綾子 中正 恵二 山中 若樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.626-633, 2009 (Released:2009-12-10)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を背景肝とした肝細胞癌(HCC)の発癌病態を検討するため,当施設で治療を行ったHCC症例中,非B非C型で,背景肝がNASHと診断された10例についてその臨床病理像や背景因子を検討した.【対象.方法】当施設で肝切除(173例)又はablation(216例)を行ったHCC 389症例中,HBs抗原・HCV抗体ともに陰性であったのは29例(7.5%)であった.そのうち臨床病理学的にNASHと診断された症例10例(2.6%)を対象とし,宿主因子,背景肝病理組織,血液検査所見,背景肝機能,腫瘍因子について検討した.【成績】(1)性・年齢は,男性7例,女性3例,平均年齢70.9±8.1歳であった.(2)Body Mass Index(BMI)が25 Kg/m2以上の肥満者は6例(60%)であったが,生活習慣病の合併率は,糖尿病6例(60%),高脂血症2例(20%),高血圧7例(70%)であった.(3)背景肝病理組織は10例中4例(40%)が肝硬変,6例(60%)が脂肪肝炎であった.また脂肪肝炎のstageはBruntの分類でS1:2:3=1:2:3と,線維化の程度が軽度から中等度の例が半数を占めた.(4)肝予備能を反映する血清アルブミン(Alb)値とプロトロンビン(PT)活性は肝硬変群においても,それぞれ4.1±0.5 g/dl,79.0±8.2%と正常であった.さらに肝硬変群をChild-Pughで分類するとAが3例,Bが1例であった.一方ICG R15は肝硬変群が31.8±25.0%であったが,慢性肝炎群においても20.5±16.5%と高値であった.(5)腫瘍因子に関しては2個以上の多結節病変を有する症例が9例(90%)で,このうちいずれかの結節が高分化型HCCであった多中心性発生は6例(67%)であった.【まとめ】NASH由来と診断されたHCCは,高齢で生活習慣病の合併率が高頻度であった.背景肝組織は肝硬変を合併しない脂肪肝炎からの発癌が多く,多中心性発生が高頻度であった.【結語】NASHに合併したHCCの背景肝は60%が脂肪肝炎であり,67%が多中心性発癌であった.また,脂肪肝炎例においては線維化が軽度の症例も認められ,HCCの合併を考慮した厳重なフォローが必要と考えられた.