著者
近藤 昭雄
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.339-369, 2016-11

非正規労働者の増加とその貧困化といった事態は、公務労働の世界においても、構造的に、存在している(「非正規公務員」問題)。この問題の基本には、短期の期間で雇用(任用)され、何度かの雇用(任用)を経た後、突如、再雇用(再任用)を拒否(雇止め)されるという、不安定な雇用下にあり、しかし、彼らに対しては、民間労働者の場合と異なって、いわゆる「雇止め法理」の適用による法的救済が完全に閉ざされているという問題が存している。 これは、最高裁が、公務員の勤務関係は「公法上の関係である」とし、さらに、公務員への任用行為は、公務員たる地位を発生させる行政処分であり、任命権者の任命行為があって、はじめて、成立するものであるとのドグマを成立させていったことに基づく。 そこで、非正規公務員の再任用拒否についても、「雇止め法理」の適用に道を拓くべく、公務員勤務関係の法的性格に関する上記判例および田中二郎博士の理論を中心とした従来の学説内容を批判的に検討した上で、公務員勤務関係といえども、民間私企業における労働関係と何ら変わりはなく、近代市民社会においては、公務員勤務関係も、労働契約関係として、把握されるべきである旨を論及した。