著者
近藤 洋輝
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.59-74, 2010-01-05 (Released:2010-01-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は,第4次評価報告書(AR4)を2007年2月に公表した.進展した観測事実などから,「気候システムの温暖化には疑う余地がない.」と温暖化が現実化していることを初めて明記し,その原因特定に関しても,「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは,人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高い」と確実性を高めた.将来予測に関しては,モデルや実験も質・量とも進展し,最良の見積もりや可能性の高い範囲(予測幅)も出している.また,炭素循環のフィードバックにより温暖化は従来の予測より更に進むことを定量的に示し始めた.上記のほか,自然災害に関連する「猛暑,熱波,大雨などの極端現象は,今後ますます頻度が増加する可能性が非常に高い.」と近年の状況がさらに激化することを示している.また,「将来の熱帯低気圧(台風,ハリケーン)の強度は増大し,最大風速や降水強度は増加する可能性が高い」 ことが指摘されている.温暖化への適応策のためには,地域的により詳細な予測情報などが求められている.