著者
迫 ゆかり 清水 寛
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.31-43, 1989-12-28 (Released:2017-07-28)

岡山県の大正期・「劣等児・低能児」教育の特徴を明らかにするために,対象児,教育方法,教育思想の観点から明治期との比較や一般教育との関連について検討した。その結果,「劣等児・低能児」教育は,一般教育と同じく大正新教育にみられる個人主義的側面と国家主義的側面の下に進められており,この二つの側面は次の結果をもたらしていた。1.個人主義的側面(肯定的側面)(1)明治期より特殊教育の必要性が高まった。(2)「劣等児」と「低能児」の定義は知能検査の導入で明治期より明確になった。(3)「劣等児・低能児」の教育方法に関心が寄せられ,特別学級の設置が提起された。2.国家主義的側面(否定的側面)(1)特殊教育対象児のうち,「劣等児・低能児」より優等児の方に重点が置かれた。(2)学業不振児として成績の向上が目指された。(3)「劣等児・低能児」を危険視した観点から教育の必要性が唱えられた。