著者
速水 幹也
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.165-185, 2016-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究では,薬学教育改革以後の6年制薬剤師養成課程を対象として,①就職(進路)と②国家試験という薬学教育における二つの「出口」に着目して分析を行い,改革の成果と課題を描出した.就職(進路)の分析からは,改革以後に病院・薬局など臨床現場への就職者割合が増加していることが明らかとなった.国家試験の分析からは,1.国家試験合格率が改革以後に低下傾向であること,2.国家試験合格率は学生の大学入学時の基礎学力によって規定されていることが明らかとなった.これら二つの結果から,改革の成果として高度な専門教育を受けた臨床現場への就職割合が増大する成果が確認された一方で,国家試験に合格できず高度な専門教育の効果を受けられない学生が生み出されているという課題が浮き彫りとなった.
著者
速水 幹也
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.175-195, 2021-08-10 (Released:2022-08-10)
参考文献数
23

本研究では,6年制課程薬学部に進学し薬剤師となることの私的収益率を,①性別・医療専門職別の比較,②女子のライフコース別の比較,③国家試験合格率と標準年限卒業率の反映,という3点を踏まえて算出した. その結果,薬剤師の収益率は男子では特に低いこと,女子については他の医療専門職より必ずしも高くないものの,ライフコース別の分析から相対的に有利な専門職であることが明らかとなった.また,国家試験合格率や標準年限卒業率を加味した分析では留年1回ごとに私立大学進学者では約1%ポイント収益率が低下することが明らかとなった.この背景として,入試難易度が影響し,収益率の低下は難易度が低い大学において顕著であり,薬学教育改革による修業年限の延長と量的拡大が要因として挙げられることを指摘した.