著者
鳥居 朋子
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-94, 2014-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
13

本稿は日本の大学におけるプログラム・レビューへの示唆を得ることを目的に,マサチューセッツ大学アマースト校とカリフォルニア州立大学ロングビーチ校に注目し,プログラム・レビューの枠組みや体制,大学のミッションや戦略的計画とプログラム・レビューの関係,レビューにおけるIRの役割機能等を検討した.その結果,①多様な学生集団を抱える大学が学生の成功を期した教育改善を実現するには,学位プログラムと教育支援プログラムを対象にした包括的なプログラム・レビューが必要となること,②大学のミッションや戦略的計画と整合したレビューの重点設定や,重点に沿った問いに導かれたセルフスタディが有効であること,③問いを解く過程でのデータ提供や新規調査開発においてIRの機能が発揮されることが明らかとなった.
著者
村澤 昌崇 立石 慎治
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.135-156, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
59

本稿では,高等教育関連の学会誌・機関誌に過去10年間に掲載された計量分析を用いた論文をレビューした.我々が分析の際に行ってしまう傾向がある各種の課題,すなわち必要最低限の情報の不記載や,分析の前提から外れた手法の適用,過剰な解釈等を確認しつつ,これらの課題を乗り越え望ましい分析結果を得るための,いくつかの対応策や新手法の有効性を分析事例とともに提案した.関連する議論として,筆者らの限界により詳細には取りあげなかった先進的手法への期待,論文の紙幅制限によって記載できない情報を共有する仕組みの重要性も併せて指摘した.最後に,高等教育研究における計量分析の質の向上と卓越性について,学会全体で取り組むべきことであることを述べた.
著者
末冨 芳
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.207-228, 2008-05-26 (Released:2019-05-13)
参考文献数
13

大学立地政策とは工場等制限法における大学新増設規制とともに,文部行政による設置認可や定員管理といった複合的な法・政策を意味する.本稿では大学立地政策の規制効果を検証するために,東京都所在大学を対象とし,大学の立地動向の質的分析と学部学生数および大学移転の変動に関する量的分析を行った.対象年度は1955,1965,1975,1985,1995,2005年度の6時点である. 先行研究においては日本における大学進学率の上昇とそれとともに浮上した地域間の進学機会格差,その是正のための大学地方分散の必要性といったことがらへの関心から,文部省の高等教育計画・政策に関する政策研究や,大学立地政策が大学生の地域間移動におよぼした影響の計量的評価等の分析が蓄積されてきた.ただし,大学立地政策の規制対象となった都市に中心的に着眼し,大学の立地や学生数がいかなる変動を見せてきたのか,という視点からの研究が不足しており,この分野での研究の蓄積が必要とされる状況にある. こうした課題意識のもとで,東京都に所在した大学について学部・学科・学年別に所在地と学部学生数をデータベース化し(東京都所在大学データベース),所在地に関する質的分析と,学部学生数と大学移転パターンに注目した量的分析を行った. その結果,(1)先行研究ではあきらかとはなっていなかった東京都規制対象地域における学部の新増設抑制効果は1975-85年度に顕著であったこと,(2)1995年度と2005年度データの比較から学部学生の「都心回帰」はまだ確認されないこと等が判明した.
著者
濱中 義隆 足立 寛
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.165-181, 2013-05-30 (Released:2019-05-13)

1997年7月に設立された日本高等教育学会は,設立から15年が経過し,会員数も700名を超えるまでに発展してきた.設立当初に比べ,会員の所属や身分も多岐にわたり,研究関心も多様化し,学会に期待される役割もまた変化しつつあるのではないかとの認識が高まりつつあった.こうした現状認識を背景として,創設15周年記念事業の一環として,2011年3月に全ての会員を対象としたアンケート調査を実施し,会員の学会における活動状況ならびに本学会に対する意見や要望等を把握することとなった.本稿は会員調査の分析結果を報告するものである.調査の結果,近年,入会者に教員・研究者以外の者の比率が高まっていること,これにともない学会の役割として研究発表の機会としてだけでなく,実務上有益な情報収集の場としての機能が求められており,会員の研究関心を集める領域もまた変化しつつあること等が明らかになった.
著者
鳥居 朋子 夏目 達也 近田 政博 中井 俊樹
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.217-235, 2007-05-26 (Released:2019-05-13)
参考文献数
24

大学のカリキュラム開発に有効な指針を提供するDiamond の「教育プログラム開発のプロセス」を現場に適用するためには,教員や専門家等によるカリキュラム開発の共同作業の促進が鍵になる.米国ミシガン大学におけるDiamond モデルの適用事例では,カリキュラム開発の過程における仲介者の役割を参考にしつつ,相談業務に有効な調査ツールや評価のためのデータ収集の方法等が工夫されていた.今日,日本では各大学の取り組みによる教育の質向上が期待されている.こうした状況で大学のカリキュラム設計および評価の手法を開発する場合,学内の合意形成や意思決定につながる対話の促進に有効な調査方法の開発・提供や人的支援の方法の改善を図ることが有効な方策の一つになると考えられる.
著者
中島 英博
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.271-286, 2011-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
24

本稿は,大学職員が管理職として必要な資質を,業務を通じて獲得する過程に注目した質的研究により考察した.本稿の主要な結論は,以下の通りである.第1に,大学職員が管理職として業務を遂行する力を身につける上で,業務を通じた学習が重要である.第2に,大学の職場において,部下の業務を適切に設計して与え,業務を通じた学習を促進できる課長職の育成が,急務の課題である.第3に,それらの実現においては,大学職員が顧客志向の信念を持てる人事制度面の整備が急務である.第4に,大学職員の職場において特徴的な学習内容は,組織内部に関する学習であり,教員組織を含む他部署の要求を把握し,満足度を高める方法で業務を進めることである.
著者
藤原 将人
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.219-238, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
25

本稿では,戦後日本の適格認定の成立と実施の過程と背景を,当時の私立大学の活動―とくに「関西四大学」に焦点をあてて明らかにしながら,適格認定が個々の私立大学の活動や教育研究にどのような影響や変化をもたらしたのか,その具体的な様相を確認することにより,同制度が大学にもった意味を解明する.まず,適格認定の成立と実施の経緯をたどり,いかに大学がそれに関わっていたのかを整理する.次に適格認定の実施をめぐる関西四大学の活動とその背景を動態的に素描する.さらにそうした適格認定や各大学の活動を,当時の私立大学がもった背景とその後の政策動向のなかに位置づけて,最後に私立大学にとって適格認定はいかなる意味をもったのかを考察する.
著者
小方 直幸
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.221-242, 2013-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
15

本稿は,国立大学の教育系大学・学部に着目し,その中長期的な改革動向を,ケース・スタディを通して考察したものである.教員採用動向に着目して,教員養成改革の特異なケースを客観的に抽出した後,定量・定性的双方の手法を用いて,カリキュラムや教育実践という狭義の教育改革を越えて,入試や就職支援を包摂する広義の教育改革を対象に,教員採用向上をめぐる改革と成果の因果関係,並びに改革を可能にしたメカニズムの析出を行った.さらに,モノグラフから一般的な枠組の抽出を試み,他の教育系大学・学部の改革を検証する際にも援用が可能な分析枠組を仮説的に提示した.
著者
武内 清
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.7-23, 2008-05-26 (Released:2019-05-13)
参考文献数
57
被引用文献数
2

学生や学生文化の特質に関する実証的データをもとに大学教育の議論を展開する必要がある. 大学の組織・集団,カリキュラムや教育活動及び大学外の活動が,個々の学生の知識や技術の獲得,そしてキャリア形成や価値観を形づくっている.また,学生の性別,出身階層,親の教育期待,学生の入学以前の特性(成績,アスピレーション,価値観等),そして学生の動機や態度によっても,大学生の社会化(socialization)や大学教育の効果は違ってくる. 最近の傾向として大学の授業は学生に対する影響を強めている.同時に,多くの学生達は,今でも大学4年間を自分の時間を自分の好きなことに自由に使い,自己を試すモラトリアム期間と位置づけたいと思っている.また,学生達はさまざまなことが体験できる「コミュニティとしての大学」も求めている. 現代の学生は生徒化し素直な傾向があり,大学や教師の教育や支援次第で,どのようにも変りうる可能性を有している.同時に,大学生の自主性の形成も大学教育の目的である. 学生が,自分のライフコースの中で,大学時代をどのように位置づけているのか.個人的な側面と,社会的経済的な側面の両面に渡って,学生の実態と学生文化に関する実証的なデータを積み重ねて,大学教育の政策に生かしていく必要がある.
著者
山下 仁司
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.87-106, 2011-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
10

高大接続,特に大学生の学力低下と,それに伴う学力担保措置のありかたについて,公開データと共に,未公開のベネッセ教育研究開発センターが行った調査結果に基づいて考察する.同センターでは,高校生とその保護者に対する進学に関する意識調査,全国の高校進路指導部の教員に対する進路指導と大学改革に関するアンケートを行った.本論文では,それらの結果をもとに,近年のユニバーサル化に伴って大学生の学力低下が起きている問題の真のありかを検討するとともに,問題解決のために高大接続テストなどの学力担保措置に求められる適切な方法や形式について,示唆を試みた.
著者
大森 不二雄
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.9-30, 2014-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本稿は,大学教育改革の鍵概念となっている「教学マネジメント」及び「内部質保証」に関し,大学経営と質保証の両面で先行した英国の政策と実態に関する分析・考察から,日本にとっての含意を得ることを目的としている. 大学教育に関する日本の政策言説は,全学的な教学マネジメントや大学ガバナンスの内部質保証にとっての有効性に,素朴なまでに信を置いている.しかし,英国の大学における教学マネジメントを含む内部質保証システムの整備の考察からは,経営機能の強化は,質保証の実質化の必要条件であっても,十分条件ではない可能性が示唆される.また,質保証の取組がコンプライアンスにとどまり,教授・学習過程にインパクトをもたらすに至っていない,との批判的分析は,質保証の一筋縄ではいかない複雑性と困難を表す.
著者
佐々木 隆生
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.63-86, 2011-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
38

高大接続は,教育上の連続と選抜という2つの側面をもつ.日本の教育上の高大接続は,ナショナル・カリキュラムによって支えられながら,欧米諸国と異なり,教育上の連続を担保する達成度試験あるいはテストを欠き,進学者の学力把握は個別大学が行う学力選抜に依存してきた.80年代後半の大学収容力の低下などに端を置く「第3の教育改革」は,①高校の多様化,②高校教育課程の弾力化,③大学入学者選抜の多様化などをもたらしたが,それらは教育上の連続のための学力把握をより一層大学入試に依存する結果をもたらした.しかし,2000年代に入って間もなく始まる18歳人口の減少は,そうした日本型高大接続を機能不全に導き,「非学力選抜」や「少数科目入試」は,高大接続に必要な教育上の連続を困難なものとしている.そこで,日本型高大接続を転換し,高校における普通教育を再構築し,高大接続に必要な教育上の連続を担保し,同時に個別大学の学力入試に依存しない大学入学者選抜実現のための「高大接続テスト」―基礎的教科・科目の全体にわたり,高校での教育の目標に準拠し,十分な標準化によって複数回受験可能で,従来の素点表示とは異なる達成度評価法に基づくテスト―の構築・導入を,大学関係者と高校関係者で進めるべきであり,国はそれを支援する必要に迫られている.
著者
市川 昭午
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.123-139, 1998-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1

After the second world war, Japanese higher education system was forced drastic changes by the occupying forces. In the prewar system that resembled the European ones, students finished their general education before entering university. In the new system students were required to continue general education in the first two years of university. The name attached to this first two years has been changed twice. At first it was called “ippan-kyouyou kyouiku (liberal arts education)” by the Japan University Association. Its aim was defined as “to bring up men of high culture by developing general intellectual ability and a wide background of knowledge,” but in reality it turned out to be a collection of introductory courses. The name was then changed to” ippan kyouiku (general and liberal education) and it has been used for forty years. Still the name and the concept has been continuously the subject of. The image of ippan-kyouiku as required but of secondary significance influenced a wide range of constituencies including administrators, students and even faculty members. Thus it was no surprise that courses classified under the name ippan-kyouiku disappeared as soon as the requirement was removed from the National Standards for Establishment of Universities in 1991. What remain in the curricula are now called “kyouyou-kyouiku (liberal education),” which is contented to be a parallel segment with specialized education rather than its preparatory stage. This recent development looks ironical in a wider context, however. In the coming age of universal higher education, the requirements for specialized education will have to be relaxed, with greater emphasis on general education throughout four years.

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著者
塚原 修一
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.93-113, 2004-04-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
37

The Corporate University (CU) is usually a strategic initiative of a company by which all levels of employees (and sometimes customers and suppliers) participate in learning experiences necessary for the improvement of job performance and the enhancement of business capabilities. It is estimated that more than 2,000 CUs exist in the United States, although this figure may be inflated. Japanese companies have in the past been renowned for their enthusiasm for the education and training of employees. However, companies’ investment in human resource management in Japan has declined through the 1990s ; by 2000 it was almost half that of major corporations in the US and Europe. To change this situation, the Ministry of Economy, Trade and Industry has recommended the introduction of CU and an American style occupation based accreditation system in Japan. In this paper, the history, definition and variations of the CU are described, and major CU cases are discussed. These are General Electric and Motorola in the US, and Toyota in Japan. The major findings are as follows: 1. The establishment of CU requires a change in the education and training policy of the corporation from traditional low cost and low return models to those that commit a high investment in anticipation of a high return. Japanese companies have demonstrated in the past that this change is beneficial. 2. CU activities in the US such as leadership development and education in corporate values, are relatively new to the Japanese corporation. These activities, and courses developing the skills and knowledge required for management and business administration, should be provided by the CU in Japan. 3. Some CUs operate co-operative programs with the university sector, or sell educational services outside of the corporation. This implies that these courses may not just develop corporate specific knowledge and skill, but knowledge and skills with more general application. This trend may be a good stimulant for post secondary vocational education and training. 4. Japan should give high priority to human resource development as an interministerial government policy.
著者
小山 治
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.199-218, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
31

本稿の目的は,社会科学分野の大卒就業者に対するインターネットモニター調査によって,大学時代のレポートに関する学習経験は職場における経験学習を促進するのかという問いを明らかにすることである.本稿の主な知見は,次の3点にまとめることができる.第1に,レポートの学習行動のうち,学術的作法は経験学習と相対的に強い有意な正の関連があったという点である.第2に,レポートの学習行動のうち,第三者的思考も経験学習と有意な正の関連があったという点である.第3に,レポートの学習行動以外の大学時代の変数は経験学習と強い関連がなかったという点である.以上から,本稿の結論は,大学時代のレポートに関する学習経験の中でも学術的作法と第三者的思考といった学習行動は職場における経験学習を一定程度促進するということになる.