著者
末冨 芳
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.207-228, 2008-05-26 (Released:2019-05-13)
参考文献数
13
被引用文献数
1

大学立地政策とは工場等制限法における大学新増設規制とともに,文部行政による設置認可や定員管理といった複合的な法・政策を意味する.本稿では大学立地政策の規制効果を検証するために,東京都所在大学を対象とし,大学の立地動向の質的分析と学部学生数および大学移転の変動に関する量的分析を行った.対象年度は1955,1965,1975,1985,1995,2005年度の6時点である. 先行研究においては日本における大学進学率の上昇とそれとともに浮上した地域間の進学機会格差,その是正のための大学地方分散の必要性といったことがらへの関心から,文部省の高等教育計画・政策に関する政策研究や,大学立地政策が大学生の地域間移動におよぼした影響の計量的評価等の分析が蓄積されてきた.ただし,大学立地政策の規制対象となった都市に中心的に着眼し,大学の立地や学生数がいかなる変動を見せてきたのか,という視点からの研究が不足しており,この分野での研究の蓄積が必要とされる状況にある. こうした課題意識のもとで,東京都に所在した大学について学部・学科・学年別に所在地と学部学生数をデータベース化し(東京都所在大学データベース),所在地に関する質的分析と,学部学生数と大学移転パターンに注目した量的分析を行った. その結果,(1)先行研究ではあきらかとはなっていなかった東京都規制対象地域における学部の新増設抑制効果は1975-85年度に顕著であったこと,(2)1995年度と2005年度データの比較から学部学生の「都心回帰」はまだ確認されないこと等が判明した.
著者
鳥居 朋子
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-94, 2014-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
13

本稿は日本の大学におけるプログラム・レビューへの示唆を得ることを目的に,マサチューセッツ大学アマースト校とカリフォルニア州立大学ロングビーチ校に注目し,プログラム・レビューの枠組みや体制,大学のミッションや戦略的計画とプログラム・レビューの関係,レビューにおけるIRの役割機能等を検討した.その結果,①多様な学生集団を抱える大学が学生の成功を期した教育改善を実現するには,学位プログラムと教育支援プログラムを対象にした包括的なプログラム・レビューが必要となること,②大学のミッションや戦略的計画と整合したレビューの重点設定や,重点に沿った問いに導かれたセルフスタディが有効であること,③問いを解く過程でのデータ提供や新規調査開発においてIRの機能が発揮されることが明らかとなった.
著者
西井 泰彦
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.135-161, 2019-05-31 (Released:2020-06-03)
参考文献数
8

本稿の目的は,1960年から現在に亘る文部科学省と日本私立学校振興・共済事業団の財務上の統計資料を利用して,私立大学の借入金を巡る動向とを振り返り,借入金に関する問題点と意義を分析することである. 日本の私立大学は,二度に亘る学生急増期と減少期を経過する中で,借入金を活用して施設設備を取得して,大学の規模の拡大を図ってきた. 借入金の比重が増大したが,その後,学生数が増加するとともに,財政上の改善が進み,自己資金が増加して借入金の返済が可能となった. しかし,近年,私立大学の拡張が止まり,財政が再び悪化している.学生数の長期的な減少が予測されており,私立大学が安定的な経営を持続するための借入金のあり方と課題を検証する.
著者
小山 治
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.199-218, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
31

本稿の目的は,社会科学分野の大卒就業者に対するインターネットモニター調査によって,大学時代のレポートに関する学習経験は職場における経験学習を促進するのかという問いを明らかにすることである.本稿の主な知見は,次の3点にまとめることができる.第1に,レポートの学習行動のうち,学術的作法は経験学習と相対的に強い有意な正の関連があったという点である.第2に,レポートの学習行動のうち,第三者的思考も経験学習と有意な正の関連があったという点である.第3に,レポートの学習行動以外の大学時代の変数は経験学習と強い関連がなかったという点である.以上から,本稿の結論は,大学時代のレポートに関する学習経験の中でも学術的作法と第三者的思考といった学習行動は職場における経験学習を一定程度促進するということになる.
著者
村澤 昌崇 立石 慎治
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.135-156, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
59

本稿では,高等教育関連の学会誌・機関誌に過去10年間に掲載された計量分析を用いた論文をレビューした.我々が分析の際に行ってしまう傾向がある各種の課題,すなわち必要最低限の情報の不記載や,分析の前提から外れた手法の適用,過剰な解釈等を確認しつつ,これらの課題を乗り越え望ましい分析結果を得るための,いくつかの対応策や新手法の有効性を分析事例とともに提案した.関連する議論として,筆者らの限界により詳細には取りあげなかった先進的手法への期待,論文の紙幅制限によって記載できない情報を共有する仕組みの重要性も併せて指摘した.最後に,高等教育研究における計量分析の質の向上と卓越性について,学会全体で取り組むべきことであることを述べた.
著者
濱中 義隆 足立 寛
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.165-181, 2013-05-30 (Released:2019-05-13)

1997年7月に設立された日本高等教育学会は,設立から15年が経過し,会員数も700名を超えるまでに発展してきた.設立当初に比べ,会員の所属や身分も多岐にわたり,研究関心も多様化し,学会に期待される役割もまた変化しつつあるのではないかとの認識が高まりつつあった.こうした現状認識を背景として,創設15周年記念事業の一環として,2011年3月に全ての会員を対象としたアンケート調査を実施し,会員の学会における活動状況ならびに本学会に対する意見や要望等を把握することとなった.本稿は会員調査の分析結果を報告するものである.調査の結果,近年,入会者に教員・研究者以外の者の比率が高まっていること,これにともない学会の役割として研究発表の機会としてだけでなく,実務上有益な情報収集の場としての機能が求められており,会員の研究関心を集める領域もまた変化しつつあること等が明らかになった.
著者
速水 幹也
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.165-185, 2016-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究では,薬学教育改革以後の6年制薬剤師養成課程を対象として,①就職(進路)と②国家試験という薬学教育における二つの「出口」に着目して分析を行い,改革の成果と課題を描出した.就職(進路)の分析からは,改革以後に病院・薬局など臨床現場への就職者割合が増加していることが明らかとなった.国家試験の分析からは,1.国家試験合格率が改革以後に低下傾向であること,2.国家試験合格率は学生の大学入学時の基礎学力によって規定されていることが明らかとなった.これら二つの結果から,改革の成果として高度な専門教育を受けた臨床現場への就職割合が増大する成果が確認された一方で,国家試験に合格できず高度な専門教育の効果を受けられない学生が生み出されているという課題が浮き彫りとなった.
著者
大森 不二雄
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.9-30, 2014-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本稿は,大学教育改革の鍵概念となっている「教学マネジメント」及び「内部質保証」に関し,大学経営と質保証の両面で先行した英国の政策と実態に関する分析・考察から,日本にとっての含意を得ることを目的としている. 大学教育に関する日本の政策言説は,全学的な教学マネジメントや大学ガバナンスの内部質保証にとっての有効性に,素朴なまでに信を置いている.しかし,英国の大学における教学マネジメントを含む内部質保証システムの整備の考察からは,経営機能の強化は,質保証の実質化の必要条件であっても,十分条件ではない可能性が示唆される.また,質保証の取組がコンプライアンスにとどまり,教授・学習過程にインパクトをもたらすに至っていない,との批判的分析は,質保証の一筋縄ではいかない複雑性と困難を表す.
著者
鳥居 朋子 夏目 達也 近田 政博 中井 俊樹
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.217-235, 2007-05-26 (Released:2019-05-13)
参考文献数
24

大学のカリキュラム開発に有効な指針を提供するDiamond の「教育プログラム開発のプロセス」を現場に適用するためには,教員や専門家等によるカリキュラム開発の共同作業の促進が鍵になる.米国ミシガン大学におけるDiamond モデルの適用事例では,カリキュラム開発の過程における仲介者の役割を参考にしつつ,相談業務に有効な調査ツールや評価のためのデータ収集の方法等が工夫されていた.今日,日本では各大学の取り組みによる教育の質向上が期待されている.こうした状況で大学のカリキュラム設計および評価の手法を開発する場合,学内の合意形成や意思決定につながる対話の促進に有効な調査方法の開発・提供や人的支援の方法の改善を図ることが有効な方策の一つになると考えられる.
著者
中島 英博
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.271-286, 2011-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
24

本稿は,大学職員が管理職として必要な資質を,業務を通じて獲得する過程に注目した質的研究により考察した.本稿の主要な結論は,以下の通りである.第1に,大学職員が管理職として業務を遂行する力を身につける上で,業務を通じた学習が重要である.第2に,大学の職場において,部下の業務を適切に設計して与え,業務を通じた学習を促進できる課長職の育成が,急務の課題である.第3に,それらの実現においては,大学職員が顧客志向の信念を持てる人事制度面の整備が急務である.第4に,大学職員の職場において特徴的な学習内容は,組織内部に関する学習であり,教員組織を含む他部署の要求を把握し,満足度を高める方法で業務を進めることである.
著者
吉田 文
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:13440063)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.71-93, 2005

<p> 本稿は,アメリカの学士課程カリキュラムの構造と機能を,日本との比較の視点で検討することを目的とする.アメリカでは,先行するliberaleducation に専門教育が導入されたという歴史的な経緯があるために,学士課程教育の理念はliberal education に,実態は専門教育に傾斜という関係が,組織構造上の矛盾として存在し,その延長上でカリキュラム改革は繰り返されてきた.日本にあるもの・ないもの,アメリカにあるもの・ないものという2軸で日米を比較すると,両者ともカリキュラムの編成形態は類似しているが,日本にはアメリカのliberal education の理念はなく,アメリカには一般教育と専門教育の教員組織を別にしていたという日本の形態はなく,編成されたカリキュラムの背後にあるものが異なっていることが明らかになった.</p>
著者
吉田 文
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:13440063)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.11-37, 2018

<p> 学生の多様化という問題が,どのように認識されどのように論じられたか,1960年代と2000年代の日本を対象に,各種の審議会の答申をもとに,イギリスとの対比で検討した.日本では,学生のメリトクラティックな選抜という観点が強く,高等教育の拡大は,能力のない学生の増加とみなされ,学生層の多様化に関しては否定的な見解が主流である.他方で,イギリスでは,1960年代以来,高等教育の拡大は,不利な背景をもつ学生層への教育の機会の提供として捉えられ,それの実現に向けての施策がとられてきた.こうした差異が生じる理由は,議論の前提としての社会的公正という理念の受容,教育拡大を社会的効用と関連して考える観点,教育拡大の結果を示す高等教育研究の蓄積によるといってよいだろう.</p>
著者
中井 俊樹
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.95-112, 2014-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
24

全学的な教学マネジメントが政策的に推進される中で職員の役割の重要性が指摘されている.しかし,職員の担う具体的な役割については明確にされているとは言えない.本稿では,教務の熟達者と考えられる職員の実践の手法を収集する過程で得られた知見をもとに次の3点が明らかにされた.第一に,熟達者の教務に対する捉え方は一定の共通点をもつが個別に違いも見られた.第二に,教務の熟達者は実践の場面でさまざまな観点から状況判断をしていることが明らかにされた.その状況判断の方法は7つに分類することができた.第三に,職員はマネジメントの推進を担っていくべきだという教務の熟達者も見られたがまだ少数であり,教学マネジメントと直接関連がある内容が教務においてあまり重要であると考えられていないことが明らかにされた.
著者
大多和 直樹
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.87-106, 2016-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
27

本稿は,大学改革において形成的評価による課題の共有と議論を活性化のために学生調査をどう活用できるのかについて考察するものである. ここでは,まず①学生調査の視角の特長とその意義について確認し,②近年行われた具体的な調査に言及しながら学生調査の最も定番的なI-E-Oモデル(カレッジインパクト理論)の特質を把握しつつ,分析のインパクトを高めるべくI-E-Oモデルを微修正することを試みた(Ⅲ章). 次に③現代の大学改革を捉え返す具体例として,どのような分析がありうるのかについて大学における主体的な学びを題材にしながら考える(Ⅳ章)とともに,④補足的に個別機関の調査おける分析の限界の克服を可能とする大規模調査やベンチマークの意義と動向についてみていく作業を行った(Ⅴ章).
著者
半田 智久
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.287-307, 2011-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
12
被引用文献数
1

当研究は国際的な観点から大学の成績評価制度におけるGPAの受容と運用の実態を知るために33ヵ国,311大学に実施した質問紙調査の分析報告である.主たる結果は次のとおりであった.米国,欧州,アジア,豪州に分けてみると,GPA制度の運用実態は地域によって大きな違いがあり,米国と日本以外のアジアの大学では9割以上で運用されている反面,欧州での運用は約2割に留まっていることがわかった.レターグレードによる成績等級とGPとの関係をみると,米国の大学ではGP の最大値を一般に4.0にしているが,これを国際的な標準とみなせる証拠は見いだせなかった.現況,同指標の国際的な通用性は成績に当該科目の単位数を関係させるというGPA 制度の根幹をなす算定原理についてのみ認めることができた.
著者
喜始 照宣
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.191-211, 2015-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
19

本稿では,作家志望の学生の卒業後進路選択に着目し,彼らの語りをもとに,美術系大学において就職者率の低さが生じるメカニズム解明を試みる.分析では,まず作家志望者の学卒後メインルートである大学院進学とアルバイト等の選択理由を検討し,それぞれの進路選択に含意された学生の意図や戦略を確認する.つぎに,彼らにとって就職が選ばれにくい背景として,実技重視の教育体制のもと,就職を「制作の休止・趣味化」とする独自の意味が生成されていることを指摘し,それは実技系教員―学生間,学生同士の相互行為により維持・強化されることを示す.しかし他方で,就職は制作継続のためであれば必ずしも忌避されておらず,彼らは大学界と美術界の論理の狭間で進路をめぐる不安や葛藤を経験していることを最後に明らかとする.
著者
藤原 将人
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.219-238, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
25

本稿では,戦後日本の適格認定の成立と実施の過程と背景を,当時の私立大学の活動―とくに「関西四大学」に焦点をあてて明らかにしながら,適格認定が個々の私立大学の活動や教育研究にどのような影響や変化をもたらしたのか,その具体的な様相を確認することにより,同制度が大学にもった意味を解明する.まず,適格認定の成立と実施の経緯をたどり,いかに大学がそれに関わっていたのかを整理する.次に適格認定の実施をめぐる関西四大学の活動とその背景を動態的に素描する.さらにそうした適格認定や各大学の活動を,当時の私立大学がもった背景とその後の政策動向のなかに位置づけて,最後に私立大学にとって適格認定はいかなる意味をもったのかを考察する.
著者
小方 直幸
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.221-242, 2013-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
15

本稿は,国立大学の教育系大学・学部に着目し,その中長期的な改革動向を,ケース・スタディを通して考察したものである.教員採用動向に着目して,教員養成改革の特異なケースを客観的に抽出した後,定量・定性的双方の手法を用いて,カリキュラムや教育実践という狭義の教育改革を越えて,入試や就職支援を包摂する広義の教育改革を対象に,教員採用向上をめぐる改革と成果の因果関係,並びに改革を可能にしたメカニズムの析出を行った.さらに,モノグラフから一般的な枠組の抽出を試み,他の教育系大学・学部の改革を検証する際にも援用が可能な分析枠組を仮説的に提示した.
著者
武内 清
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.7-23, 2008-05-26 (Released:2019-05-13)
参考文献数
57
被引用文献数
2

学生や学生文化の特質に関する実証的データをもとに大学教育の議論を展開する必要がある. 大学の組織・集団,カリキュラムや教育活動及び大学外の活動が,個々の学生の知識や技術の獲得,そしてキャリア形成や価値観を形づくっている.また,学生の性別,出身階層,親の教育期待,学生の入学以前の特性(成績,アスピレーション,価値観等),そして学生の動機や態度によっても,大学生の社会化(socialization)や大学教育の効果は違ってくる. 最近の傾向として大学の授業は学生に対する影響を強めている.同時に,多くの学生達は,今でも大学4年間を自分の時間を自分の好きなことに自由に使い,自己を試すモラトリアム期間と位置づけたいと思っている.また,学生達はさまざまなことが体験できる「コミュニティとしての大学」も求めている. 現代の学生は生徒化し素直な傾向があり,大学や教師の教育や支援次第で,どのようにも変りうる可能性を有している.同時に,大学生の自主性の形成も大学教育の目的である. 学生が,自分のライフコースの中で,大学時代をどのように位置づけているのか.個人的な側面と,社会的経済的な側面の両面に渡って,学生の実態と学生文化に関する実証的なデータを積み重ねて,大学教育の政策に生かしていく必要がある.