著者
高宮 信三郎 進藤 典子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.回虫成虫体壁および自活性線虫C.elegansのミトコンドリア蛋白のプロテオーム解析(1)大気圧下の好気的環境に生息する自活性線虫C.elegansと、宿主の腸腔という酸素分圧の低い環境に生息するブタ回虫の体壁から、高純度のミトコンドリアを単離する方法を確立した。(2)C.elegansとブタ回虫体壁からのミトコンドリア蛋白を二次元電気泳動で展開し、そのパターンを比較したところミトコンドリア蛋白の組成が両者間で著しく異なっていた。特に分子量45および31kDa付近において顕著な相違がみられた。C.elegansの蛋白の主要スポット18を切り出し、In-gel digestion後、質量分析計により解析した。C.elegans由来と確定された14スポットのうち11が、ミトコンドリアに局在する蛋白として同定された。そのうちわけをみると、ATP合成酵素のサブユニット(atp-2)、ヒートショックプロテイン(hsp-60)、プロピオニルCoAカルボキシラーゼのα、βサブユニット、TCA回路の構成酵素であるリンゴ酸脱水素酵素およびアコニターゼ、グルタミン酸脱水素酵素であった。また、ミトコンドリア外膜に局在するポーリン様の蛋白も見いだされている。2.回虫呼吸鎖複合体および酸化還元蛋白の分子特性解析(1)回虫成虫体壁のシトクロムb5前駆体を大腸菌で発現させたところ、native蛋白と同一な性質を有した蛋白がペリプラズムに輸送された。本蛋白はワンステップのイオン交換クロマトで精製され,大量調製に適した発現系である。(2)回虫L3複合体II CybSサブユニットの分子クローニングを行ったところ、成虫のものとは異なったものであることが明らかとなった。3.今後の展望:計画した項目は一部未達成であるが、上述のように、比較的少量の材料から高純度のミトコンドリアを調製する方法を確立し、ミトコンドリア蛋白を一部マッピングできたことの意義は大きく、今後,回虫成虫と幼虫の解析を飛躍的に進めたい。