著者
逵本 吉朗
出版者
国立研究開発法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、単一光子間の和周波発生(SFG)を用いた量子もつれ交換高度化の世界初の原理検証実験を目標に研究を行っている。この目標を達成するためには、量子もつれ光子対の高効率な生成・検出システムの確立と、高効率かつ安定なSFGモジュールの作成を含めた量子インターフェースを開発することが必要である。今年度は、周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路(PPLN/W)をサニャック干渉計へ組み込み、高輝度量子もつれ光子対源および高効率なSFGモジュールを開発した。まず、中心波長 775nmのモードロックレーザでPPLN/Wを励起し、量子もつれ光子対を生成した。次に、得られた光子対を中心波長1535nm/1565nm・波長幅0.9nmの周波数フィルタで狭窄化し、この帯域内での同時検出レートを超伝導単一光子検出器(SSPD)で検出した。量子もつれ光子対の検出レートは最大で1.4MHzに達し、光子対の高効率な生成・検出システムの確立に成功した。この成果については現在論文を執筆中である。また、SFGモジュールの立ち上げを行った。92%以上という非常に高い効率でレーザ光を結合させることに成功し、第二高調波発生(SHG)の規格化変換効率1129 [%/W]を得た。これにより、SFGモジュール単体で見ても先行研究よりも高いSFG変換効率を有していることを確認した。さらに、PPLN/Wにより生成したSHG光を励起光源として応用し、非常に大きい平均光子数(1程度)を有する量子もつれ光子対の生成に成功した。これまでの研究で、この様な量子もつれ光子対を用いることで、その非局所性を最大限に利用することができるというシミュレーション結果を得ており、その予測を実験的に裏付けることに成功した。この成果については米国物理学会誌Physical Review Aに掲載された。