著者
遠山 聡
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.606, pp.606_211-606_230, 2009-09-30 (Released:2011-11-26)
参考文献数
23

本稿は,傷害保険契約の外来性要件について,従来の裁判例及び学説における議論の状況を踏まえて,平成19年の2つの最高裁判決(7月6日判決および10月19日判決)の意義と今後の災害保険金の支払実務における課題について分析検討を行うものである。とりわけ疾病免責条項や限定支払条項(寄与度減額の根拠となるべき条項)は,今後ますますその重要性を増すことは明らかであるが,傷害保険がそもそもどのような目的で制度設計されたものであるのか,派生して,外来性本来の存在意義ならびに判断基準について再度確認しておくことが必要ではないか。このような問題意識から得た結論は,端的にいえば,疾病が間接原因に過ぎない場合であっても,それが結果発生に対して重要な影響を与えているような場合(主要な原因)には,免責事由ではなく,保険金支払事由の枠組み,すなわち外来性要件の充足の問題として取り扱われるべきものと解するというものである。